なぜ経理は辞める? 中小企業経営者が陥る「バックオフィス軽視」の罠と、人材定着3つの処方箋
「また経理担当者が辞表を持ってきた」「採用してもすぐに辞めてしまう」「そもそも応募者が集まらない」――。こうした悩みを抱える中小企業経営者は、決して少数ではありません。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、事務職種全体の離職率は全産業平均(15.4%)を上回る水準で推移しており、とりわけ従業員数100名以下の中小企業においては、経理・財務担当者の離職が経営上の重大リスクになるケースが頻発しています。
問題の根は深いところにあります。多くの経営者が「給与を上げれば解決する」「待遇を改善すれば定着する」と信じていますが、現場の経理担当者に丁寧にヒアリングすると、離職の動機はもっと構造的な問題に起因していることがほとんどです。
本記事では、中小企業・スタートアップに多く見られる「バックオフィス軽視」の実態を経営者・現場双方の視点から解剖し、経理人材が長く活躍できる組織づくりに向けた「3つの処方箋」を具体的なステップとともにご提案します。採用コストを垂れ流し続ける前に、ぜひ最後までお読みください。
第1章:経理離職の実態と経営へのダメージ――「一人が辞める」とどれだけ損失が出るか
経理担当者の離職が引き起こす連鎖コスト
「経理が辞めた」という出来事を、単なる人事異動と軽く考えてはいけません。経理担当者一人の離職が経営に与えるダメージは、想像以上に広範囲かつ長期間にわたります。採用コンサルティング大手の試算では、中途採用一人あたりの採用コスト(求人広告費・エージェント手数料・面接工数・研修費等)は職種平均で100〜150万円程度とされており、経理・財務は専門性が高い分、相場がさらに高い傾向があります。
しかし採用コストはまだ「見える化」できる損失です。見えにくい損失こそが危険です。
| 損失の種類 | 具体的な内容 | 規模感(目安) |
|---|---|---|
| 直接採用コスト | 求人広告費、エージェント手数料(年収の20〜35%)、面接工数 | 80〜200万円 |
| 引き継ぎ・教育コスト | 前任者の引き継ぎ期間の二重人件費、新任者の戦力化までの教育時間 | 50〜100万円相当 |
| 業務空白リスク | 月次決算の遅延、資金繰り悪化の見落とし、税務・社会保険の申告ミス | 損害額は事案次第 |
| 経営判断の遅延 | 経理情報が不揃いな状態での意思決定リスク、銀行融資への影響 | 機会損失として無限大 |
| 残存メンバーへの負荷 | 他部署スタッフへの業務転嫁による燃え尽き、連鎖離職リスク | 計り知れない |
実際に、あるEC系スタートアップ(従業員20名・年商3億円)では、たった一人の経理担当者が退職したことで、月次決算が2ヶ月滞り、メインバンクからの融資審査が大幅に遅延するという事態が起きました。社長が経理業務を兼務するはめになり、本業の営業活動に割く時間が激減。結果的にその四半期の新規受注件数が前年同期比で30%以上落ち込んだと言います。「たかが経理一人」のコストが、事業成長そのものを止める引き金になる――これが「バックオフィス軽視」の現実です。
経理担当者が「辞める」と決断する瞬間
では、経理担当者はどのような瞬間に「辞めよう」と決断するのでしょうか。独自調査や現場ヒアリングから見えてきた離職トリガーのトップ5は以下のとおりです。
- 「頑張っても正当に評価されない」と感じた時:月次決算を前倒しで完了させ、資金繰り改善に貢献しても、経営者から一言もフィードバックがない状況が続くと、「見えていない仕事をしているだけだ」という虚無感が積み重なります。
- 「業務量が増え続けるのに人員が増えない」と限界を感じた時:事業拡大に伴い取引先・従業員・勘定科目が増えても、バックオフィスの体制がそのままでは、残業時間が一方的に膨らみます。「成長の恩恵は自分には来ない」という不公平感が辞意に直結します。
- 「キャリアアップの道が見えない」と気づいた時:「今の仕事をこなすだけで、5年後も10年後も同じ作業をしているのではないか」という漠然とした不安は、特に20代〜30代前半の担当者に強く作用します。
- 「孤立している」と感じた時:一人経理で相談相手がいない、経営者は忙しくて話しかけにくい、判断に迷っても誰にも聞けない――こうした「孤立感」は心理的安全性を著しく低下させます。
- 「このままでは会社がまずい」と危機感を持った時:資金繰りの悪化や税務リスクを担当者自身が認識しているのに、経営者に報告しても「うまくやっておいて」と流される経験が続くと、「この船から降りなければ」という判断につながります。
注目すべきは、これらのどれも「給与が低い」という理由が主因ではない点です。もちろん適正な報酬は必要条件ですが、それだけでは不十分です。経理が辞める理由の本質は、「仕組み」と「関係性」と「将来像」にあります。
第2章:経営者が無意識に陥る「バックオフィス軽視」の罠――3つの誤った思い込み
思い込み①「経理はコスト部門だから最小投資でいい」
中小企業経営者の中には、「経理は直接売上を生み出さないコスト部門だ」という価値観を持っている方が少なくありません。この思い込みは、採用予算・システム投資・研修機会のすべてにおいて、経理部門への配分を後回しにする判断につながります。
しかし、現代の経営環境において、経理部門の機能水準は企業の「意思決定の質」に直結します。月次試算表が翌月末にしか出てこない会社と、翌月10日に出てくる会社では、資金繰りの予見性・投資判断のスピード・銀行との交渉力に明確な差が生じます。経理は守りを固めるだけでなく、経営の「航法士」としての機能を担っているのです。
以下の比較表をご覧ください。「経理への投資を惜しむ会社」と「経理を戦略部門として位置づける会社」の差は、5年スパンで見ると歴然とします。
| 評価軸 | 経理軽視の会社 | 経理重視の会社 |
|---|---|---|
| 月次決算の完了タイミング | 翌月末〜2ヶ月後 | 翌月10日前後 |
| 資金ショートの予見 | 発生直前まで気づかない | 3〜6ヶ月前から対策 |
| 銀行融資の審査通過率 | 低い(資料が不揃いで信頼性が低い) | 高い(財務情報が整備されている) |
| 税務調査リスク | 高い(記帳ミス・証憑管理の不備) | 低い(適切な内部統制) |
| 経理担当者の平均在籍年数 | 1〜2年(高離職) | 4〜6年以上(定着) |
| 採用・教育コスト(5年計) | 500万円超(頻繁な採用・育成コスト) | 100〜200万円(定着によりコスト逓減) |
思い込み②「うちは小さいから一人で十分、経理は誰でもできる」
「従業員が20人、30人程度なら経理は一人で回せるはず」という経営者の判断は、ある段階までは正しいかもしれません。しかし事業が成長するにつれ、経理業務の複雑性は売上の増加以上の速度で膨張します。
売上が2倍になれば、取引件数・請求書枚数・経費精算件数も概ね2倍以上になります。さらに、従業員が増えれば給与計算・社会保険手続き・年末調整の対象者が増え、複数拠点や法人化が伴えば連結対応・グループ間取引の管理も必要になります。こうした業務量の増大が、担当者一人にのしかかるのです。
「経理は誰でもできる」という思い込みも危険です。現代の経理業務には、会計基準の理解・税務法規の知識・クラウド会計ソフトの操作・内部統制の設計・資金繰り管理・銀行折衝・決算書の読解力など、広範な専門知識が求められます。「誰でもできる」という前提で採用し、結果的に「こんなに難しいとは思わなかった」と苦しむ担当者と、「こんな簡単な仕事と思われていたのか」と傷つく経験豊富な担当者の両方を生み出してしまうのです。
思い込み③「優秀な人が頑張ってくれているから大丈夫」
これが最も危険な思い込みです。責任感が強く優秀な経理担当者ほど、非効率な業務フロー、人員不足、システムの不備を、個人の努力とスキルで補ってしまいます。経営者の目には「経理がうまく回っている」と映るため、問題が表面化しません。
しかしその水面下では、担当者が毎月の月次決算を「残業と気合い」でギリギリ乗り切っているかもしれません。「今はなんとかなっているが、事業がさらに拡大したら完全に破綻する」という予感を、担当者だけが抱えているかもしれません。そしてある日突然、燃え尽きた担当者から退職の意思を告げられる――「なんの前触れもなく」突然辞める経理担当者の多くは、実はずっと前から限界を感じていたのです。
この「静かな限界」を見逃さないためには、「うまく回っているように見える」状態を、「仕組みが機能しているから」ではなく「担当者が無理をしてくれているから」という仮説で疑う視点が経営者には必要です。
第3章:「業務の属人化」が組織を蝕む――見えないリスクを可視化する
属人化がもたらす4つのリスク
経理業務が特定の担当者一人に依存している「属人化」の状態は、単に引き継ぎが大変というレベルの問題ではありません。組織全体の持続可能性を脅かす4つのリスクをはらんでいます。
- リスク①:退職・病気・事故による業務停止リスク
担当者が突然休職・退職した場合、「その人しか知らない業務」が山積し、月次決算・給与計算・資金繰り管理がすべてストップします。代替要員を立てようにも、何がどこにあるかすら分からない、という事態が現実に起きています。 - リスク②:ブラックボックス化による不正リスク
一人の担当者が経理のすべてを掌握し、他の誰もチェックできない状態は、不正が起きやすい環境でもあります。内部不正の多くは「忙しくて確認していなかった」「任せきりにしていた」という状態で発生します。信頼は大切ですが、組織的なチェック機能は信頼とは別次元の話です。 - リスク③:担当者のプレッシャーと孤立による精神的疲弊
「自分が休んだら会社が回らない」という重圧を常に感じながら働く担当者の精神的負荷は相当なものです。有給休暇を取れない、体調不良でも出勤する、という状態が続けば、いずれメンタル面での破綻に至ります。 - リスク④:スケールアップの障壁
業務が属人化していると、組織を拡大する際に「あの人の頭の中にしかない情報」が障壁になります。新しい担当者や外部リソースを活用しようとしても、現行業務の全貌が見えなければ適切な分業も外部委託も設計できません。
「属人化度チェックリスト」で今すぐ自社を診断する
以下のチェックリストで、自社の経理業務の属人化リスクを確認してください。
| チェック項目 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 月次決算の手順が文書化されていない | □ | □ |
| 経理担当者が1週間以上休んだら業務が止まる | □ | □ |
| 銀行口座・会計ソフトのパスワードを知っているのが1人だけ | □ | □ |
| 請求書・契約書の保管場所が担当者しか把握していない | □ | □ |
| 前任者が作ったExcelがそのまま使われており内容が誰も分からない | □ | □ |
| 支出の承認フローが明文化されていない | □ | □ |
| 税理士とのやりとりを担当者だけが担っている | □ | □ |
| 経営者が経理業務の全体像を把握していない | □ | □ |
「はい」が3つ以上あれば、属人化が進んでいる危険な状態です。5つ以上は緊急改善が必要なレベルと考えてください。
第4章:経理が「この会社で長く働きたい」と思う組織をつくる3つの処方箋
処方箋①:経営者の「経理観」をアップデートし、正当な評価と投資を行う
最初にすべきことは、経営者自身の意識改革です。「経理=コスト部門」という古い認識を捨て、「経理=経営の羅針盤であり、成長を支える戦略機能」という認識に切り替えてください。この認識の転換なしには、以下のどの施策も根付きません。
具体的なアクション:
- 月に一度、経理担当者との1on1ミーティングを設ける
「月次試算表の報告を受ける場」ではなく、「業務上の課題・負荷感・課題感を率直に話せる場」として設計してください。「今一番大変なことは何ですか?」「今後やってみたい業務はありますか?」という問いかけから始めましょう。 - 経理の成果を「見える化」して称賛する
「決算が3日早く上がった」「資金繰り改善策を提案してくれた」「税務調査を無事乗り切った」などの成果を、経営者自ら言語化して感謝を伝えてください。金銭的報酬より先に、「見てもらえている」という実感が定着の土台になります。 - 研修・資格取得を会社として支援する
日商簿記・税務知識・クラウド会計ソフトの資格取得を会社費用で支援する仕組みを作りましょう。スキルアップを会社が応援してくれるという経験は、担当者の「ここで成長できる」という信頼感に直結します。 - 業務システムへの適切な投資を惜しまない
クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)、経費精算システム(Concur・Stapleなど)、電子帳票保存への移行は「コスト」ではなく「人材定着への投資」として評価してください。システム投資で担当者の単純作業が月20時間削減できれば、それは実質的な人員増強に相当します。
処方箋②:「仕組み」で属人化を解消し、誰もが安心して働ける体制を構築する
担当者一人の能力と努力に依存する体制から脱却するには、「仕組み」を作ることが不可欠です。仕組み化とは、業務プロセスを標準化・文書化し、特定の人がいなくても一定のクオリティで業務が回る状態を作ることです。
具体的なアクション:
- 業務マニュアルの整備(まず3ヶ月の優先作業として位置づける)
月次業務カレンダー・日常仕訳の処理ルール・支払い承認フロー・銀行手続きの手順などを文書化します。完璧なマニュアルを一気に作ろうとせず、「自分がいなくても誰かが1週間だけ代行できるレベル」を最初のゴールに設定すると着手しやすくなります。 - 情報の一元管理(クラウドストレージ・チャットツールの活用)
契約書・請求書・通帳コピー・税務申告書類などの重要書類をGoogle DriveやBoxなどのクラウドストレージで共有フォルダ管理し、担当者だけがアクセスできる状態を解消します。パスワードもパスワード管理ツール(1Passwordなど)で会社として管理しましょう。 - 複数担当制・バックアップ体制の整備
一人経理が難しい規模感でも、「月次決算レビューを税理士と共同で行う」「経費精算の承認を他部門リーダーと共同で担う」など、業務の一部に複数の目が入る仕組みを作ることができます。完全な属人化から少し離れるだけで、担当者の心理的負荷は大幅に軽減されます。 - 定期的な業務棚卸しと「やめる・減らす・自動化する」の実行
半年に一度、担当者と一緒に現行業務の棚卸しを行い、「本当に必要な業務か」「自動化できないか」「外部委託できないか」を検討するセッションを設けましょう。「忙しいから無理」ではなく、「忙しいからこそ棚卸しが必要」という発想が重要です。
以下は、属人化解消のロードマップの例です。
| フェーズ | 期間 | 主な取り組み | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
| Phase 1:現状把握 | 1ヶ月目 | 業務棚卸し・時間計測・課題ヒアリング | 問題の可視化・優先順位の確定 |
| Phase 2:即効策 | 2〜3ヶ月目 | クラウド会計移行・書類電子化・パスワード共有 | 情報の共有化・アクセスリスクの低減 |
| Phase 3:標準化 | 4〜6ヶ月目 | 業務マニュアル作成・月次業務カレンダー整備 | 引き継ぎ可能な状態の実現 |
| Phase 4:自動化・外部活用 | 7〜12ヶ月目 | 経費精算・請求書処理の自動化、記帳代行の外部活用 | 担当者の稼働削減・戦略業務へのシフト |
処方箋③:担当者の「声」を聴き、多様なキャリアと働き方に寄り添う個別マネジメントを実践する
経理担当者といっても、そのキャリア観・ライフステージ・仕事への期待値は一人ひとり大きく異なります。「CFOを目指してキャリアアップしたい」という人もいれば、「専門性を活かしながら、家庭との両立を最優先したい」という人もいます。そして、その価値観は時間とともに変化します。
一律的な「全員同じ条件・同じキャリアパス」では、この多様性には対応できません。個々の状況と希望に合わせた「個別マネジメント」の実践が、これからの時代の人材定着の要です。
具体的なアクション:
- 「キャリア面談」を半年ごとに実施する
「今の仕事の満足度は?」「3年後、どんな役割を担いたいか?」「どんなスキルを伸ばしたいか?」を定期的に確認し、会社としての期待と本人の希望のすり合わせを行います。面談の内容は簡単で構いません。重要なのは「会社が自分のキャリアを気にかけてくれている」という実感を定期的に与えることです。 - ライフステージに合わせた柔軟な働き方の選択肢を用意する
育児・介護・体調管理など、ライフステージによって働き方の希望は変わります。時短勤務・フレックス・リモートワークなど、複数の選択肢を用意し、「申し出れば対応できる」ということを事前に周知しておきましょう。「言いにくい」雰囲気が続く限り、担当者は「ここにはいられない」と判断します。 - 「相談できる窓口」を複数確保する
判断に迷う場面で「経営者に聞くしかない、でも忙しそうで聞きにくい」という状況は、孤立感を生みます。顧問税理士を「気軽に相談できる存在」として積極的に活用する、あるいは業務委託の会計専門家をバックアップとして確保するなど、相談先を経営者だけに集中させない体制を整えましょう。 - 「担当外業務」への関与機会を作る
決算書を経営会議でプレゼンする機会を与える、事業計画の数字作りに参加させる、M&Aや資金調達のプロジェクトに関与させるなど、「経理業務の枠を超えた関与」を積極的に設けることで、成長実感とエンゲージメントが高まります。経理担当者にとって「管理部門から経営に近づく体験」は、強力なモチベーション要因になります。
第5章:今日から始める経理定着のための実践ロードマップ
まず「今週」にできること(即効性の高い5ステップ)
大きな仕組み改革に着手する前に、今週中にできることから動き始めることが重要です。変化の意思を行動で示すことが、担当者の信頼獲得への第一歩です。
- ステップ1:経理担当者と「感謝の1on1」を設定する
まずは30分、「最近の業務で大変なことはないか?正直に教えてほしい」という場を設けてください。評価や指示は不要です。聴くことだけが目的です。 - ステップ2:「属人化チェックリスト」で現状を把握する
前述のチェックリストを使って、自社の経理業務の属人化度を数値化してください。「感覚」ではなく「チェックリスト」で可視化することで、問題の深刻さを客観的に認識できます。 - ステップ3:経理システムの現状棚卸しを依頼する
「現在使っているツール・ソフト・Excelファイルのリストと、それぞれの課題点を教えてほしい」と担当者に依頼します。これだけで、担当者は「経営者が業務を理解しようとしている」と感じ、心理的な距離が縮まります。 - ステップ4:「何か一つ、業務を楽にするための投資」を決める
クラウド経費精算システムの導入(月額数千円〜)、書類スキャン・PDF化の徹底(無料でできる)など、今すぐ決断できる小さな改善を一つ決めて、担当者に伝えてください。「改善に動いてくれた」という経験が積み重なることが重要です。 - ステップ5:顧問税理士に「担当者が相談しやすい関係づくり」を依頼する
税理士との月次面談に担当者を同席させる、「分からないことがあれば直接連絡していい」と伝えてもらうなど、担当者の孤立を防ぐ外部ネットワークを整備します。
「3ヶ月後」を目標にした中期改善計画
| 取り組み項目 | 担当者 | 期限 | 完了の判断基準 |
|---|---|---|---|
| 月次業務カレンダーの文書化 | 経理担当者(経営者がレビュー) | 1ヶ月以内 | 書類として共有フォルダに保存済 |
| 重要書類のクラウド移管 | 経理担当者+総務 | 2ヶ月以内 | 過去3年分の書類が電子化・共有済 |
| 経費精算フローの電子化 | 経営者決裁→経理担当が導入 | 2ヶ月以内 | 紙の経費精算書が廃止された |
| キャリア面談の実施 | 経営者or人事責任者 | 3ヶ月以内 | 面談記録が残り、次回日程が決定済 |
| 業務マニュアル(最重要業務5つ)の作成 | 経理担当者(時間確保を経営者が支援) | 3ヶ月以内 | 別の担当者が読んで業務遂行できるレベル |
まとめ:経理の定着は「経営の器」を広げること
経理担当者が辞める本当の理由は、給与の問題だけではありません。「正当に評価されない」「成長できる環境がない」「孤立して限界まで頑張るしかない」「仕組みがなく個人の努力だけで回っている」――こうした構造的な問題が、優秀な人材を静かに追い出しているのです。
そしてその問題の根源は、ほとんどの場合、経営者の「経理観」と「バックオフィスへの投資姿勢」にあります。経理を「コスト」として見るか、「経営の戦略パートナー」として見るか――この認識の差が、5年後の組織の健全性を決定的に左右します。
本記事でご提案した3つの処方箋を整理すると、次のとおりです。
- 処方箋①:経営者の「経理観」をアップデートし、正当な評価・感謝・システム投資・研修支援を行う
- 処方箋②:業務の標準化・文書化・情報共有化によって属人化を解消し、「仕組み」で会社を回す体制を作る
- 処方箋③:担当者一人ひとりの声を定期的に聴き、キャリアパス・働き方・相談体制を個別に設計する個別マネジメントを実践する
どれか一つだけでは不十分です。3つが組み合わさって初めて、「ここで長く働きたい」と思える環境が生まれます。
経理が定着している会社は、財務情報の精度が高く、経営判断のスピードが速く、銀行評価も高く、結果的に成長スピードが上がります。経理への投資は、経営の器そのものを広げる行為です。「また経理が辞めた」という悪循環を断ち切り、バックオフィスを会社の強みに変えるための第一歩を、ぜひ今日から踏み出してください。
「楽して休みたい会計士」こと、筆者も、成長企業のバックオフィス強化を日々サポートしています。「うちの会社、どこから手をつければいいか分からない」という経営者の方は、まずお気軽にご相談ください。


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