なぜ経理は辞める? 中小企業経営者が陥る「バックオフィス軽視」の罠と、人材定着3つの処方箋

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「また経理担当者が辞表を…」「どうしてウチの会社は経理が育たないんだろう?」 そんな頭の痛い問題を抱えるスタートアップや中小企業の経営者・役員の皆様、こんにちは。「楽して休みたい会計士」こと、シクミです。普段は、会計や業務改善のコンサルタントとして、皆さんのような成長企業のバックオフィス効率化をお手伝いしています。

優秀な経理人材の採用が難しく、せっかく採用しても長続きしない…その原因、本当に給与や待遇だけだと思っていませんか? もしかしたら、会社の中に「経理が働きにくい仕組み」や「成長を実感できない環境」が無意識のうちに作られてしまっているのかもしれません。

この記事では、多くの中小企業が見落としがちな「経理が定着しない本当の理由」を、経営者の視点、そして経理担当者の視点の両方から深掘りし、具体的な「処方箋」を提案します。この記事を読めば、経理が「辞めたくない」会社にするためのヒントが見つかるはずです。

1. 「経理の仕事、ちゃんと見てますか?」経営者と現場の“認識ズレ”が不満の温床

多くの中小企業で、経営者と経理担当者の間には、経理業務に対する「認識のズレ」が存在します。これが、現場の不満と離職の大きな原因になっているのです。

  • 「経理はコスト部門で、売上には貢献しない」という思い込み: 経営者の中には、経理業務を「単なる記帳や支払い処理」と捉え、利益を生み出さないコスト部門だと考えている方が少なくありません。しかし、正確な月次決算がなければ迅速な経営判断はできませんし、適切な資金繰り管理がなければ会社の存続は危うくなります。経理は、会社の守りを固め、攻めの経営を支える重要な機能です。この価値を経営者が認識しない限り、経理への投資は後回しにされ、担当者は正当な評価も得られず、疲弊していきます。
  • 「ウチの会社は小さいから、経理は一人で十分」という過信: スタートアップや中小企業では、経営者が「バックオフィス業務は最低限でいい」「経理なんて誰でもできる」と過小評価し、一人に多くの業務を押し付けてしまうケースが見られます。しかし、会社が成長し、売上や取引量が増えれば、経理業務は比例して、いやそれ以上に複雑化し、量も増大します。「なんでそんなに仕事があるの?」と経営者が疑問に思う裏で、経理担当者は「事業は拡大しているのに、バックオフィスの体制は何も変わらない…このままでは残業が増えるばかりだ…」と絶望しているかもしれません。
  • 「現場の頑張り」に甘え、仕組み化を怠る経営: 優秀で責任感の強い経理担当者ほど、個人のスキルと頑張りで、多少非効率な業務フローや人員不足をカバーしてしまいがちです。経営者はその「頑張り」を見て、「ああ、ウチの経理はうまく回っているな」と誤認し、根本的な業務改善や体制強化を怠ってしまう。しかし、その担当者も人間です。「一時的に頑張っているだけなのに、これが当たり前だと思われて、さらに仕事が増える…もう限界だ」と感じ、燃え尽きてしまうのです。

2. 「あの人に聞かないと分からない…」が危険信号!“業務の属人化”が会社を弱くする

経理業務が特定の人にしか分からない「属人化」の状態は、中小企業にとって非常に大きなリスクです。

  • 担当者の孤立とプレッシャー増大: 特に一人経理の場合や、専門知識を要する業務を一人で抱えている場合、判断に迷った時や困った時に相談できる相手がいません。「経営者に相談したいけど、忙しそうだし、こんなことで時間を取らせるのは申し訳ない…」と、一人で責任とストレスを抱え込みがちです。
  • ブラックボックス化と引き継ぎ不能リスク: 私がコンサルで関わった企業でも、前任者が作成した複雑なExcelファイルが大量に残り、その処理ロジックや判断基準が誰にも理解できず、業務がブラックボックス化しているケースがありました。これでは、その担当者が辞めてしまった場合、業務の引き継ぎはほぼ不可能です。関連資料がどこにあるのかさえ分からない、ということも。
  • 不正の温床にもなりかねない: 業務が一人の担当者に集中し、他の誰もチェックできない状態は、残念ながら不正が発生しやすい環境も生み出してしまいます。

経営者は、「あの人が優秀だから大丈夫」と安心するのではなく、業務が属人化することの危険性を正しく認識し、積極的に「仕組み」で解決しようとする姿勢が不可欠です。

3. 経理が「この会社で輝きたい!」と思える環境へ。経営者が打つべき3つの処方箋

では、どうすれば経理人材が定着し、その能力を最大限に発揮してくれるのでしょうか? 経営者が今すぐ取り組むべき、3つの「処方箋」を提案します。

  • 処方箋1:経理の「価値」をアップデートし、敬意と投資を! まずは、経営者自身の「経理観」をアップデートしましょう。経理は単なるコストセンターではなく、会社の成長と安定を支える戦略的パートナーです。その専門性と貢献を正しく評価し、敬意を伝え、必要な投資(効率化システム、研修機会、適正な人員配置)を惜しまないでください。これは「コスト」ではなく、未来への「投資」です。
  • 処方箋2:「仕組み」で属人化を防ぎ、誰もが安心して働ける土壌を作る! 担当者個人の能力に依存する体制から脱却し、会社として業務の標準化・見える化を進めましょう。業務マニュアルの整備と共有、情報共有ツールの活用、可能であれば複数担当制や業務ローテーションの導入など、知識とスキルが組織に蓄積され、誰かが休んでも業務が回る「仕組み」を構築します。
  • 処方箋3:経理担当者の「声」を聴き、多様なキャリアと働き方に寄り添う! 経理担当者といっても、そのキャリア観やライフステージは一人ひとり異なります。「CFOを目指しバリバリ働きたい」人もいれば、「家庭と両立しながら安定して長く専門性を活かしたい」人もいます。そして、その価値観は時間と共に変化します。 彼らが何を求め、何に不安を感じているのか、定期的にコミュニケーションを取り、その声に真摯に耳を傾けましょう。そして、可能な範囲で、個々の希望や状況に合わせたキャリアパスの提示、柔軟な働き方(時短、リモートなど)、適切な役割分担を検討・支援する個別マネジメントの視点が、これからの時代、人材定着には不可欠です。 また、経理担当者が判断に迷った際に、経営者自身が相談に乗ることはもちろん重要ですが、「役員の時間を奪いたくない」という担当者の遠慮も理解し、顧問税理士や外部の会計専門家、あるいは社内の別担当者など、気軽に相談できる相手・体制を確保することも、彼らの心理的安全性を高め、孤立を防ぐ上で非常に効果的です。

まとめ:経理の定着は、会社の「未来」そのもの。経営者の意識改革から始めよう!

「経理が定着しない…」その問題の根源は、多くの場合、経営者の経理業務への理解不足や、担当者を孤立させてしまう社内の仕組みの不備にあります。

経理部門は、会社の羅針盤であり、成長のエンジンを支える心臓部です。その重要性を認識し、専門性を尊重し、必要な投資を行い、誰かに過度な負担がかからないように業務を「仕組み化」し、安心して相談できる環境を整え、そして一人ひとりの価値観やライフステージに寄り添うこと。

これらは決して単なる「コスト」ではなく、会社の**持続的な成長と、従業員全体の幸福のための、最も重要な「戦略投資」**なのです。

その投資は必ずリターンをもたらします。経理担当者の定着率向上はもちろん、業務効率化によるコスト削減、内部統制強化によるリスク低減、そして何より、従業員が安心して「ラク」に、やりがいを持って働けるという、会社にとっても従業員にとってもWin-Winの状況を生み出すのです。

まずは、あなたの会社の経理担当者の声に、改めて真摯に耳を傾けることから始めてみませんか? 彼らが安心してその専門性を発揮できる「仕組み」づくりこそが、強い組織と持続的成長への鍵となるはずです。

📊 バックオフィス「成長乖離」セルフチェック

貴社のバックオフィス体制が、事業の成長スピードに追いついているか、3つの質問で簡易診断します。

以下の項目について、「頻繁にある(3点)」「たまにある(1点)」「全くない(0点)」で点数をつけ、合計してください。


Q1. 【情報連携】請求書や支払データ作成時に、経理担当者が他部署へ電話やチャットで内容を確認する作業が発生している。

Q2. 【属人化】銀行のネットバンキングや税理士連携用パスワードの管理が、担当者一人のPC内のみで行われており、社長や管理職が把握できていない。

Q3. 【時間ロス】営業担当や事業部長が、本来の営業活動以外の事務作業(発注書作成、契約書チェックなど)に、毎日3時間以上費やしている。


▼ 診断結果

【0〜2点の方:順調な成長フェーズです】現状、大きな問題は見当たりません。今の運用を維持しつつ、引き続き日々の改善を積み重ねながら、事業拡大を進めていってください。

【3点以上の方:成長スピードとのズレが発生中】貴社の仕組みは、事業拡大のスピードに追い付いていない可能性があります。まずは、現場(特に経理部門)にヒアリングを行い、有休消化率や残業状況を確認してください。

💡 さらに詳しい分析と対策が必要な方へ「具体的にどこがボトルネックなのか?」「何から改善すれば良いのか?」お問い合わせからご相談可能です。

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