「この改善案、絶対会社のためになるはずなのに、社長はなかなかウンと言ってくれない…」 「今の業務量でもうパンク寸前。このまま事業が拡大したら、残業地獄が続くだけじゃないか…」 「新しい人も採用してくれないし、ミスも怖い。もう、何も変えられないなら、今のうちに辞めるしかないのかな…」
日々、会社の数字と向き合い、誰よりも現状を理解している経理担当者だからこそ、こんな風に強い無力感に苛まれることがあるかもしれません。
この記事は、そんな「会社を良くしたい」という思いと、「でも、どうすれば経営者に分かってもらえるんだろう…」というジレンマを抱える、スタートアップや中小企業の経理担当者のあなたに向けて書いています。
なぜ社長は、時にバックオフィスの改善提案に消極的に見えるのでしょうか? その背景にある経営者の「本音」や「見ている景色」を理解し、どうすればあなたの切実な声が「聞く耳」を持ってもらえるのか。そして、それが結果的にあなた自身の働きやすさと会社の成長にどう繋がるのか。
そのための具体的なヒントやコミュニケーション術を、会計や業務改善のコンサルにも携わる「楽して休みたい会計士」シクミが、一緒に考えていきたいと思います。
なぜ社長は「ノー」と言うのか? 経営者の”本音”と”見ている景色”
まず、なぜ経営者は、時にバックオフィスの改善提案や必要な投資に慎重になるのでしょうか? そこには、経営者ならではの「本音」や「見ている景色」があります。
多くの中小企業では、既に人件費が固定費として重くのしかかっているのが現実です。その中で、新たなシステム導入に数万円、数十万円、あるいは経理人材の採用に一人分の人件費…といった話が出てくると、経営者としては「その資金があるなら、まず営業を一人雇って売上を拡大したい」と、より直接的に売上に繋がる投資を優先したいと考えるのは自然なことです。
特に、内部システムや経理部門の体制強化といったバックオフィス関連の投資は、直接的な売上増には結びつかず、PL(損益計算書)の販管費率を圧迫するだけというイメージを持たれがちです。そのため、「今の売上の伸びで、この追加固定費を本当に吸収できるのか?」という心配が先に立ち、なかなか投資に踏み切れないのです。
また、経営者の中には、「バックオフィス業務は一人いれば十分だろう」「経理の仕事なんて、入出金管理やハンコ押し、書類整理くらいのものだ」と、業務内容やその専門性を十分に理解していない、あるいは過小評価しているケースも残念ながら見受けられます。この知識不足が、バックオフィス人材への正当な評価を妨げ、必要なコストをかけないという判断に繋がっていることもあります。
結果として、経験の浅い担当者が一人で多くの業務を抱え、その担当者からの業務改善提案やシステム導入の訴えに対しても、「まだその段階ではない」「もっと売上が上がってから」と、そもそも聞く耳を持ってもらえない…そんな悪循環に陥っている会社も少なくありません。
「ウチの社長、分かってない…」と嘆く前に。”説得”に必要な心構えとは?
こうした経営者の「本音」や「事情」を理解すると、「じゃあ、どうすればいいんだ…」とさらに無力感を感じてしまうかもしれません。しかし、ここで諦めてはいけません。
大切なのは、「ウチの社長は分かってくれない!」と感情的に反発したり、愚痴を言ったりするのではなく、まず経営者の立場や優先順位、日々感じているプレッシャーを理解しようと努めることです。
経営者は、会社全体の存続と成長という大きな責任を負っています。限られたリソース(人・モノ・金・時間)をどこに配分するのが最も効果的か、常に厳しい判断を迫られています。その経営者の「見ている景色」を想像し、共感しようとする姿勢こそが、建設的な対話を生む第一歩となるのです。
社長を動かす!「聞く耳」を持たせる業務改善・体制強化の進言術【IPO準備にも必須】
経営者の立場を理解した上で、では具体的にどうすれば、あなたの改善提案に「聞く耳」を持ってもらえるのでしょうか? ここでは、特に効果的な「進言術」のポイントを解説します。これは、日々の業務改善だけでなく、IPO準備における経理体制強化の必要性を訴える際にも役立つはずです。
- ポイント1:タイミングを見極める どんなに良い提案も、相手に聞く余裕がなければ伝わりません。社長が比較的落ち着いている時や、経営会議など公式な場で議題として取り上げてもらうなど、適切なタイミングを選びましょう。
- ポイント2:数字(データ)で客観的な根拠を示す これが最も重要です。あなたの提案が、いかに会社の利益に貢献するか、あるいは現状の非効率がどれだけのコスト(時間=人件費、機会損失など)を生んでいるかを、具体的な数字で示しましょう。 例えば、「現在の〇〇業務には月△時間の工数がかかっており、残業代に換算すると□円のコストです。新しいシステムを導入すれば初期費用は×万円ですが、月々の工数が▽時間削減され、年間◇円のコスト削減が見込めます。また、売上が2倍になった場合、現状のやり方では工数も2倍になりますが、システム導入によりその増加を●●時間抑制できます。結果、中長期的にはこちらの方が安く、成長にも対応できます」といった論理です。
- ポイント3:社長の「関心事」と言葉で語る あなたの提案が、社長が日頃から気にしている経営課題(例えば、売上拡大、利益率向上、資金繰り改善、人材育成、リスク管理など)の解決にどう貢献するのかを明確に結びつけて説明しましょう。「この改善は、社長が目指す〇〇の達成に繋がります」と、社長の言葉や目標を使って語ることで、より「自分ごと」として捉えてもらいやすくなります。
- ポイント4:スモールスタートと成功事例を提示する 大きな変革や高額な投資には、誰でも慎重になります。可能であれば、「まずはこの部分だけ小さく試してみて、効果を検証しませんか?」といったスモールスタートを提案したり、他社(特に同業種や同規模)での成功事例を具体的に示したりするのも有効です。
- ポイント5:リスクと対策も正直に伝える 新しい提案には、メリットだけでなく、潜在的なリスクやデメリットも伴う場合があります。それらを隠さず正直に伝え、考えられる対策も併せて提示することで、あなたの誠実さと分析力が伝わり、信頼感が増します。
経理からの「賢い進言」が会社を変える! あなたの市場価値もUP
バックオフィスからの業務改善提案や体制構築への積極的な関与は、会社の成長に貢献するだけでなく、提案し実行したあなた自身のスキルアップと市場価値向上に直結します。
経営者視点で物事を考え、データに基づいて論理的に提案し、周囲を巻き込んで改善を推進できる経理担当者は、どんな会社でも必要とされる貴重な人材です。その経験は、あなたの職務経歴書を輝かせ、次のキャリアステップへの大きな武器となるでしょう。
まとめ:経営者の本音を理解し、賢い進言でバックオフィスを変革。そして、自分も会社も「ラク」になろう!
「社長が改善案を聞いてくれない…」その背景には、経営者なりの悩みや優先順位、そして時にはバックオフィス業務への理解不足があるかもしれません。
しかし、そこで諦めるのではなく、この記事で紹介したように、
- 経営者の立場や本音を理解しようと努めること。
- 客観的なデータ(特にコストと効果)に基づいた論理的な提案を準備すること。
- 経営者の関心事に結びつけて、そのメリットを分かりやすく伝えること。
これらの「賢い進言術」を実践することで、あなたの声はきっと経営者に届き、バックオフィスは変革の時を迎えるはずです。
それは、**あなたのキャリアを豊かにし、日々の業務を効率化して「ラクして休める」**という理想に近づくだけでなく、会社のコスト構造を改善し、持続的な成長を後押しすることにも繋がります。まさに、従業員にとっても、会社にとってもWin-Winの関係です。
この「社内業務の改善を通じて、自分も会社もより良くしていく」という経験は、どんな業種・職種の方にとっても役立つ、普遍的で価値の高いスキルです。
まずは、あなたの会社で「これ、もっと良くなるはずなのに…」と感じている小さなことから、始めてみませんか? その一歩が、あなたと会社の未来を、より明るいものに変えるかもしれません。


コメント