なぜウチの経理はすぐ辞める? 定着の鍵は経営者の”経理観”と”脱・属人化

two women near tables 業務改善
  1. 「ウチの経理、なぜか定着しない」——その悩み、経営者自身が原因かもしれません
  2. 経理の離職率は本当に高いのか? 数字で見る現状
  3. なぜ経理はコストセンターと誤解されるのか——「経理観」の歪みが生む悪循環
    1. 「経理=コスト」という致命的な誤解
    2. 「経理観」の歪みが生む負のスパイラル
  4. 「あの人しか分からない」が会社を壊す——属人化という時限爆弾
    1. 属人化はなぜ起きるのか
    2. 属人化がもたらす2つのリスク——担当者と会社の両方を傷つける
    3. 担当者側のリスク
    4. 会社側のリスク
  5. 経理が「辞めたい」と思う瞬間——実際の声から見えるリアル
    1. 「仕事を理解してもらえていない」と感じたとき
    2. 「限界を超えた業務量」を課されたとき
    3. 「成長できない環境」にいると気づいたとき
    4. 「相談できる環境がない」と孤立したとき
  6. 今すぐ着手できる! 経理が「長く働きたい」と思える環境づくり5つの実践ステップ
    1. ステップ1:経営者自身の「経理観」をアップデートする
    2. ステップ2:業務の「見える化」と脱・属人化を仕組みとして実装する
    3. ステップ3:IT投資を「コスト」ではなく「経営インフラへの投資」として判断する
    4. ステップ4:「相談できる体制」を外部リソースも使って構築する
    5. ステップ5:個々のキャリアと働き方を尊重した「個別マネジメント」を実践する
  7. 採用段階でのミスマッチを防ぐ——経理担当者を「正しく採る」ための視点
    1. 求人票・面接で「リアルな業務内容」を正直に伝える
    2. 「なぜこのポジションが空いているか」を誠実に説明する
    3. 「数字に強い人」だけでなく「コミュニケーション能力」も重視する
  8. 経理の「定着率」を測る——自社の現状を診断するチェックリスト
  9. 「経理が強い会社」は経営が強い——定着率改善がもたらす経営へのインパクト
    1. 意思決定のスピードと質が上がる
    2. 採用コストが下がる
    3. 融資・資金調達の成功率が上がる
  10. まとめ——経営者の「姿勢」と「仕組み」が、経理定着の鍵を握る

「ウチの経理、なぜか定着しない」——その悩み、経営者自身が原因かもしれません

「経理担当者を採用してもすぐ辞めてしまう」「給与を上げたのに、それでも離職が続く」「気づいたら経理の中身が誰にも分からない状態になっていた」——そんな悩みを、スタートアップや中小企業の経営者から日々耳にします。

経理の定着率が低い会社には、共通した構造的な問題があります。それは給与水準でも景気でもなく、経営者自身の「経理観」と、社内に蔓延する「業務の属人化」という、2つの根深い課題です。

本記事では、「なぜ経理が定着しないのか」を構造レベルから解説し、今日から実践できる具体的な改善策をお伝えします。経理担当者の方も、「まさにこれ」と感じる部分があるはずです。経営者と経理担当者、双方がこの問題を正しく理解することが、定着率向上への第一歩です。

経理の離職率は本当に高いのか? 数字で見る現状

まず、経理・財務職の離職に関する実態を把握しておきましょう。厚生労働省の雇用動向調査によると、専門・技術職全体の離職率は例年10〜12%程度で推移しています。一方、中小企業における経理・事務職の離職率は、企業規模や業種によって差はあるものの、30人未満の企業では15〜20%を超えるケースも珍しくないという調査結果が複数の人事コンサルティング機関から報告されています。

さらに問題なのは、「離職の表面的な理由」と「本当の理由」のギャップです。退職理由として申告される上位は「給与・待遇への不満」「キャリアアップのため」ですが、退職者の本音調査(エン・ジャパン等)では、以下のような理由が実態に近いとされています。

表向きの退職理由本音の退職理由
給与・待遇への不満業務量が多すぎるのに評価されない
キャリアアップのためスキルアップできる環境がない
人間関係経営者や上司に仕事を理解してもらえない
体調不良属人化による過重労働・精神的疲弊
家庭の事情柔軟な働き方が認められない

給与を上げても定着しない場合、この「本音の不満」にアプローチできていないことが原因です。つまり、問題の本質は「仕組み」と「経営者の姿勢」にあります。

なぜ経理はコストセンターと誤解されるのか——「経理観」の歪みが生む悪循環

「経理=コスト」という致命的な誤解

経理が定着しない会社の経営者に共通しているのが、経理部門を「コストセンター(費用だけかかって利益を生まない部門)」として捉えているという認識の歪みです。

確かに、経理担当者の人件費や会計ソフトの費用、顧問税理士への報酬は「費用」として計上されます。しかし、経理が担う機能の本質は「費用」ではありません。正しく理解するなら、経理は会社経営の意思決定を支えるインフラです。

経理が果たしている主な役割を整理すると、以下のようになります。

  • 経営判断の羅針盤:月次・四半期・年次の財務諸表、試算表、キャッシュフロー計算書を通じて、会社の現在地を可視化し、経営者が意思決定するための基礎情報を提供する
  • 資金リスクの管理:入出金の管理、資金繰り表の作成、銀行融資対応など、会社の命綱であるキャッシュを守る
  • 内部統制の番人:不正・横領・ミスを防ぐための承認フローや証憑管理など、ガバナンスの根幹を担う
  • 税務・法務コンプライアンス:消費税・法人税・給与計算・社会保険など、法令に基づいた義務を履行し、会社の社会的信用を守る
  • 投資家・金融機関への対外信頼性:正確な財務報告は、融資審査・投資判断・取引先との与信に直結する

これらはどれも、「なくても短期的には困らない」ように見えて、機能が壊れると会社が立ち行かなくなるものばかりです。それでも「経理はコスト」と捉えてしまう背景には、「営業が売上を作っている」「製造・開発が製品を作っている」という、直接的な価値創造との対比があります。

「経理観」の歪みが生む負のスパイラル

経営者が「経理=コスト」と思っていると、具体的にどのような問題が連鎖するのでしょうか。

経営者の認識・行動経理担当者への影響結果
IT投資を後回しにする手作業・Excel頼りの非効率業務が続く残業増加・ミスのリスク上昇
人員補強を渋る1人に業務が集中・過重労働燃え尽き・離職
研修・資格取得を支援しないスキルアップの機会がない成長できないと感じ転職を検討
経理の意見を軽視する改善提案が無視され続けるモチベーション低下・孤立感
報告・相談の場がない問題を一人で抱え込む精神的疲弊・突然の離職

こうした負のスパイラルの末に担当者が離職すると、「次の人を採用する」ことになりますが、その採用コストは中小企業の場合、求人媒体費・採用工数・引き継ぎロスを合算すると50万〜100万円以上になることも珍しくありません。「コスト削減」のつもりが、却って莫大なコストを生み出す——これが「経理観の歪み」が招く皮肉な現実です。

「あの人しか分からない」が会社を壊す——属人化という時限爆弾

属人化はなぜ起きるのか

中小企業の経理部門において、「業務の属人化」は非常に深刻かつ普遍的な問題です。属人化とは、特定の個人に業務知識・スキル・判断基準が集中し、その人がいなければ業務が回らない状態のことです。

属人化が起きやすい背景には、以下のような要因があります。

  • 「経理は専門的だから担当者に全部任せよう」という経営者の丸投げ姿勢
  • 人員が少なく、バックアップ体制を作れないリソース不足
  • 業務マニュアルを作る時間・余裕がない
  • 「自分がいなくてはいけない」という担当者の(無意識の)自己防衛心理
  • 経営者が経理業務の全体像を把握していないため、問題に気づけない

特に経理は、会社固有の勘定科目体系・仕訳ルール・取引先ごとの慣習・過去の経緯などが複雑に絡み合っており、「その人だけが知っている暗黙知」が蓄積しやすい職種です。その結果、担当者本人でさえ「なぜそうしているのか」を言語化できていない処理が発生します。

属人化がもたらす2つのリスク——担当者と会社の両方を傷つける

属人化の問題を「担当者にとってのリスク」と「会社にとってのリスク」に分けて整理します。

担当者側のリスク

  • 孤立と孤独:誰にも相談できず、自分一人で全ての問題を抱える。「社長は忙しいから相談できない」「同僚は経理を知らないから話しても仕方ない」という閉塞感が蓄積する
  • 休暇が取れない:自分がいないと業務が止まるため、有給休暇を消化できない。病気や急なトラブルがあっても休めないプレッシャー
  • 燃え尽き症候群:「自分がなんとかしなければ」という責任感で限界まで頑張り続け、ある日突然心身が限界を迎える
  • 評価されない不満:これだけ重要な仕事をしているのに、経営者に理解されず、適切に評価・感謝されないという虚無感

会社側のリスク

  • 突然の業務停止リスク:担当者が急に退職・長期病欠した場合、月次締め・給与計算・税務申告が止まる。最悪の場合、資金繰りの把握すらできなくなる
  • 不正・ミスの温床:チェック機能が働かず、担当者のミスや悪意ある行為を誰も発見できない
  • 引き継ぎコストの爆発:担当者が退職した際、業務内容を解読するだけで数ヶ月を要し、その間の業務の混乱・ミスによる損失が生じる
  • 経営判断の遅延:経理の状況が経営者に正しく伝わっていないため、重要な意思決定が遅れる

実際に私がコンサルティングで見てきた事例では、創業10年の製造業(従業員30名)で、経理歴8年のベテラン担当者が突然退職した際、後任への引き継ぎに3ヶ月かかり、その間に消費税の申告期限を誤認するという重大ミスが発生したケースがありました。このような「担当者が辞めてから初めて属人化の深刻さに気づく」という事態は、決して珍しくありません。

経理が「辞めたい」と思う瞬間——実際の声から見えるリアル

経理担当者へのヒアリングや各種調査から見えてくる「辞めたいと感じる瞬間」を具体的にまとめました。経営者の方は、自社に当てはまるものがないか確認してください。

「仕事を理解してもらえていない」と感じたとき

  • 月次決算の報告をしても「で、結局いくら儲かってるの?」としか言われない
  • 「経理って何してるの? 伝票打ってるだけでしょ?」という言葉を聞いたとき
  • 業務改善の提案を「忙しいからとりあえず今のやり方で」と却下され続けたとき

「限界を超えた業務量」を課されたとき

  • 会社が成長して取引量が3倍になったのに、人員も仕組みも変わらないまま
  • 経理以外の庶務・総務・人事業務も「なんとなく」担当させられ、業務範囲が青天井に広がる
  • 月末・四半期末になると毎回深夜残業が当然のようになっている

「成長できない環境」にいると気づいたとき

  • ずっと同じ手作業を繰り返すだけで、新しいスキルが身につかない
  • 簿記1級やFASS検定の資格取得を目指したいが、勉強する時間も支援もない
  • 「経理としてのキャリアビジョン」を描けない

「相談できる環境がない」と孤立したとき

  • 税務や会計処理で迷ったとき、気軽に相談できる相手がいない
  • 顧問税理士が「決算のときにしか来ない」「質問しても連絡がつかない」状態
  • 経営者に相談しようとすると「それくらい自分で判断して」と言われる

これらのポイントに共通しているのは、「給与の問題」ではなく、「環境・姿勢・仕組みの問題」であるということです。つまり、経営者の取り組み次第で、ほぼ全て改善できる問題です。

今すぐ着手できる! 経理が「長く働きたい」と思える環境づくり5つの実践ステップ

ステップ1:経営者自身の「経理観」をアップデートする

全ての改善の出発点は、経営者の意識改革です。「経理はコストセンター」という認識を、「経理は経営の羅針盤であり、成長のインフラ」へと更新しましょう。

具体的なアクションとして、以下を試してください。

  • 月次報告の場を設ける:月に1回、30分でも経理担当者と1on1の時間を確保し、財務状況・業務の課題・担当者の悩みを直接聞く
  • 財務リテラシーを高める:貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の基本を経営者自身が理解することで、経理との会話の質が劇的に変わる
  • 感謝と承認を言語化する:「決算お疲れ様」「今月の資金繰り表、分かりやすかったよ」という一言が、担当者のモチベーションに直結する

ステップ2:業務の「見える化」と脱・属人化を仕組みとして実装する

属人化解消は「担当者に頼む」のではなく、「経営者が仕組みとして推進する」ものです。以下の手順で取り組みましょう。

フェーズ1:業務棚卸し(1〜2週間)

  • 担当者が行っている全業務をリストアップ(日次・週次・月次・年次に分類)
  • 各業務の所要時間、担当者以外にできる人がいるかを確認
  • 「この業務は自分しか分からない」というものを特定する

フェーズ2:マニュアル化(1〜2ヶ月)

  • 優先度の高い業務から手順書・マニュアルを作成(動画録画も有効)
  • 作成の時間を業務時間として公式に確保する(残業時間でやらせない)
  • NotionやGoogle Driveなどのクラウドツールで共有・更新しやすい形式で管理

フェーズ3:複数担当制の確立(3〜6ヶ月)

  • 入力作業・チェック作業・承認作業を分離し、少なくとも2名が関与できる体制を目指す
  • 副担当者を育成し、月次業務の一部を担わせる
  • 担当者が1週間休んでも業務が止まらない状態をゴールに設定する

ステップ3:IT投資を「コスト」ではなく「経営インフラへの投資」として判断する

経理業務の非効率を解消するためのIT投資は、経理担当者の業務負荷を下げ、定着率向上に直結します。代表的なツールと導入効果を以下に示します。

課題推奨ツール・手法期待効果月額コスト目安
仕訳・記帳の手間freee / マネーフォワードクラウド会計銀行明細の自動取込で記帳工数50〜70%削減3,000〜5,000円
請求書・領収書の管理invox / バクラク / TOKIUM電子帳簿保存法対応+入力自動化5,000〜3万円
給与計算SmartHR / freee人事労務給与計算・年末調整の自動化、ミス削減5,000〜2万円
経費精算楽楽精算 / マネーフォワードクラウド経費紙申請廃止・差し戻し作業の削減5,000〜1.5万円
資金繰り管理MFクラウドキャッシュフロー / Excelテンプレ活用リアルタイムな資金状況の可視化無料〜3,000円

月額2〜5万円のツール投資で、経理担当者の残業時間を月10〜20時間削減できれば、人件費・健康コスト・離職リスクの観点から十分に元が取れます。ツール選定は担当者本人を巻き込んで行うと、導入後の定着率も上がります。

ステップ4:「相談できる体制」を外部リソースも使って構築する

経理担当者が孤立しない環境を作ることは、精神的な安全性を確保し、離職防止に直結します。以下のような多層的な相談体制を整えましょう。

  • 顧問税理士の活用方法を見直す:決算・申告時だけの関与ではなく、月次巡回監査や定例相談に切り替え、担当者が日常的に相談できる関係を構築する
  • 会計事務所との連携強化:税理士事務所によっては、経理担当者向けのサポート(仕訳指導・業務改善提案)を提供しているところもある。こうしたサービスを積極的に活用する
  • 外部の経理代行・アドバイザーを部分活用:繁忙期の経理補助、特定業務(年末調整・決算サポート)のアウトソーシングにより、担当者の負担を一時的に軽減する
  • 経営者自身が「相談窓口」になる:「いつでも相談していい」という姿勢を明示する。週1回15分でも「経理専用の相談時間」を設けるだけで、担当者の心理的安全性は大きく変わる

ステップ5:個々のキャリアと働き方を尊重した「個別マネジメント」を実践する

経理担当者といっても、キャリアビジョンやライフステージは一人ひとり異なります。一律の管理・評価ではなく、個別の状況に応じたマネジメントが定着率を高めます。

タイプキャリアニーズ経営者が取るべき対応
キャリアアップ志向CFO・財務マネージャーを目指したい管理会計・資金調達・IR業務などの上位業務を段階的に委任する
安定・長期就業志向専門スキルを活かして長く安定して働きたい業務の標準化・分業化を進め、無理なく長く続けられる体制を整える
育児・介護両立型家庭と仕事を両立させたい時短勤務・リモートワーク・フレックス制度の整備、業務の分割可能性を高める
スキルアップ・資格取得型簿記1級・税理士・FASS検定などを取得したい受験費用補助・勉強時間の確保・資格取得後の役割・待遇見直しを明示する

採用時・入社後の定期的な1on1で「このポジションで何を実現したいか」「どんな働き方が理想か」を丁寧に聞き出し、会社の方向性とすり合わせることが重要です。「会社が自分のことを理解してくれている」という実感こそが、長期定着の最大の動機になります。

採用段階でのミスマッチを防ぐ——経理担当者を「正しく採る」ための視点

離職問題は「採用後」だけの話ではありません。採用段階でのミスマッチが後の離職につながるケースも多くあります。以下の点を採用プロセスで意識しましょう。

求人票・面接で「リアルな業務内容」を正直に伝える

  • 「月次決算・年次決算・給与計算・税務対応すべて1名で担当」という実態を明確に伝える
  • 現在のツール環境(紙・Excel中心なのか、クラウド活用済みなのか)をオープンにする
  • 残業時間の実績を正直に開示する(月繁忙期の残業20時間など)

「なぜこのポジションが空いているか」を誠実に説明する

前任者の退職理由は、候補者が最も気にするポイントです。「退職した理由は明かせない」という態度は不信感を招きます。「業務が属人化していたため退職につながった。今後はこうした改善を進める」という誠実な姿勢が、優秀な候補者の信頼を得ます。

「数字に強い人」だけでなく「コミュニケーション能力」も重視する

中小企業の経理は、他部門や経営者との調整・説明が頻繁に発生します。数字処理能力だけでなく、「経営者に説明できるか」「他部門に協力を依頼できるか」というコミュニケーション適性も重要な採用基準です。

経理の「定着率」を測る——自社の現状を診断するチェックリスト

以下のチェックリストで、自社の経理環境を確認してください。

チェック項目できている要改善
経理担当者と月1回以上、定期的に1on1を行っている
経理業務のマニュアル・手順書が最新の状態で存在する
担当者が1週間休んでも業務が継続できる体制がある
会計ソフト・クラウドツールを活用し、手作業を最小化している
担当者が日常的に相談できる税理士や外部専門家との連携がある
担当者のキャリアビジョン・ライフスタイルを把握し、対応策を講じている
経理業務改善の提案を、経営者が積極的に受け入れている
繁忙期の残業時間が月20時間以内に抑えられている

「△」が3つ以上あった場合は、早急に改善着手が必要なレベルです。5つ以上あった場合は、担当者がすでに転職を検討している可能性があります。

「経理が強い会社」は経営が強い——定着率改善がもたらす経営へのインパクト

経理担当者が定着し、業務が安定・効率化されると、会社経営全体にポジティブな影響が広がります。

意思決定のスピードと質が上がる

月次決算が締め日から3営業日以内に完了し、正確な試算表が経営者の手元に届く環境があれば、「今月は攻める」「来月は投資を控える」という意思決定を迅速・正確に行えます。経理が属人化・非効率化している会社では、月次が翌月末にようやく完成するというケースも珍しくなく、その時点では「すでに2ヶ月前の情報」しかありません。

採用コストが下がる

経理担当者の平均勤続年数が3年から7年になれば、年間の採用コストは大幅に削減されます。採用に費やす経営者の時間・精神的コストも無視できません。定着率の改善は、直接的な財務改善につながります。

融資・資金調達の成功率が上がる

金融機関は、財務諸表の品質と経理体制の整備度を融資審査で重視します。経理が安定していて、正確な決算書が毎年提出できる会社は、融資の審査において有利に働きます。スタートアップの場合も、投資家デューデリジェンスに耐えられる経理体制の整備が資金調達の成否を左右します。

まとめ——経営者の「姿勢」と「仕組み」が、経理定着の鍵を握る

「なぜウチの経理は定着しないのか」——この問いへの答えは、シンプルです。

  • 経理を「コストセンター」として軽視し、適切な投資・評価・理解を提供できていない
  • 属人化を放置し、担当者に過剰な責任と孤立を強いている

この2つが根本原因です。そして、どちらも経営者の意識と行動によって変えられることです。

経理担当者は、「安定して長く働きたい」と思っている人が多い職種です。だからこそ、少しの仕組みと姿勢の変化が、劇的な定着率改善につながります。

今日からできることを、もう一度整理します。

  • 今週中に:経理担当者と30分の1on1を設定し、「最近困っていることはないか」と聞く
  • 今月中に:業務棚卸しを一緒に行い、属人化している業務を特定する
  • 3ヶ月以内に:優先度の高い業務のマニュアルを1本作成し、ITツールの見直しを検討する
  • 半年以内に:担当者が1週間休んでも業務が回る体制を整える

経理が安定して機能する会社は、経営者の意思決定が速く、資金リスクに強く、組織として成熟しています。経理担当者を「コスト」ではなく「最も重要な経営パートナー」として扱うことが、会社の持続的成長への近道です。

「経理が強い会社は、経営が強い」——この事実を経営者として腹に落とし、今日から一つずつ行動を変えていきましょう。

📊 バックオフィス「成長乖離」セルフチェック

貴社のバックオフィス体制が、事業の成長スピードに追いついているか、3つの質問で簡易診断します。

以下の項目について、「頻繁にある(3点)」「たまにある(1点)」「全くない(0点)」で点数をつけ、合計してください。


Q1. 【情報連携】請求書や支払データ作成時に、経理担当者が他部署へ電話やチャットで内容を確認する作業が発生している。

Q2. 【属人化】銀行のネットバンキングや税理士連携用パスワードの管理が、担当者一人のPC内のみで行われており、社長や管理職が把握できていない。

Q3. 【時間ロス】営業担当や事業部長が、本来の営業活動以外の事務作業(発注書作成、契約書チェックなど)に、毎日3時間以上費やしている。


▼ 診断結果

【0〜2点の方:順調な成長フェーズです】現状、大きな問題は見当たりません。今の運用を維持しつつ、引き続き日々の改善を積み重ねながら、事業拡大を進めていってください。

【3点以上の方:成長スピードとのズレが発生中】貴社の仕組みは、事業拡大のスピードに追い付いていない可能性があります。まずは、現場(特に経理部門)にヒアリングを行い、有休消化率や残業状況を確認してください。

💡 さらに詳しい分析と対策が必要な方へ「具体的にどこがボトルネックなのか?」「何から改善すれば良いのか?」お問い合わせからご相談可能です。

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