「うちの経理もAIでラクになる?」「でも、何から始めたらいいかサッパリ…」 最近よく聞く「AI(人工知能)」という言葉。ニュースやSNSで見かけるけれど、自分の会社の経理業務にどう活かせるのか、具体的にイメージできている方はまだ少ないかもしれません。特に中小企業やスタートアップでは、「AIなんて大企業の話でしょ?」と思われがちですよね。
でも、ちょっと待ってください! 実は、AIはもっと身近な存在になりつつあり、経理業務の効率化や生産性向上において、規模に関わらず強力な味方になってくれる可能性を秘めているんです。
この記事では、そんなAI初心者の経理スタッフ、マネージャー、そして経営者の皆様に向けて、
- 経理業務でAIって具体的に何ができるの?
- 導入するメリットは?
- でも、会社の機密情報とか大丈夫?(超重要!)
- 実際にどうやって始めたらいいの?
- AIが入ってきたら、私たちの仕事はどうなるの?
といった疑問に、会計や業務改善のコンサルにも携わる「楽して休みたい会計士」シクミが、分かりやすくお答えしていきます。この記事を読めば、経理におけるAI活用の具体的なイメージと、安全かつ効果的に進めるための重要なポイントがきっと見つかるはずです!
1. そもそも経理業務で「AI」って何ができるの?~難しい話は抜き!具体例でイメージしよう~
「AI」と聞くと、なんだかすごく高度で複雑なものを想像してしまうかもしれませんね。でも、経理業務で活用されるAIは、もっと私たちにとって身近で、具体的な作業を手伝ってくれるイメージです。難しい話は抜きにして、まずは「こんなことができるんだ!」という具体例を見ていきましょう。
- 事例1:請求書処理・支払業務の自動化
- Before: 紙やPDFで届いた大量の請求書。内容を目で確認し、会計ソフトに一件ずつ手入力。振込先の口座番号や金額を間違えないように、何度もチェック…。月末月初の大きな負担でしたよね。
- After (AI活用): AI-OCR(光学的文字認識)が請求書を自動で読み取り、日付、取引先、金額、そしてなんと勘定科目まで自動で提案!あなたは内容を確認し、承認するだけ。振込データも自動で作成され、支払処理もスムーズに。手入力による金額間違いや口座番号の不備による組み戻し手数料、その手間、先方への謝罪連絡といった多大な工数が、劇的に削減できます。
- 事例2:経費精算の自動チェック
- Before: 社員から提出される大量の経費精算申請。領収書と申請内容の突合、規定違反がないかのチェック、消費税区分の確認…細かくて時間のかかる作業でした。
- After (AI活用): スマホで撮影したレシートをAIが自動で読み取り、日付や金額、費目を自動入力。さらに、社内規定と照らし合わせて、日当や交通費の上限超過、不適切な経費などを自動でアラート。消費税の読み取り精度も向上し、経理担当者のチェック作業の負担とミスが大幅に減ります。
- 事例3:月次決算業務の効率化
- Before: 各種データの収集・集計、試算表の作成、勘定残高の照合、異常値のチェック…多くの手作業と目視確認が必要で、時間もかかり、ミスも起こりがちでした。
- After (AI活用): 定型的なデータ集計や照合はAIが自動で実行。過去のデータパターンから異常値を検出し、早期に注意を促してくれます。**過去資料の検索や過去の数値との整合性チェックも短時間で可能に。**これにより、経理担当者はより分析的な業務に時間を割けるようになります。
- 事例4:問い合わせ対応の自動化(チャットボット)
- Before: 社内の他部署や従業員から、経費精算のルール、有給休暇の残日数、給与明細の見方など、繰り返し同じような質問が経理に寄せられ、その都度対応に追われていた。
- After (AI活用): AIチャットボットが、よくある質問に対して24時間365日自動で回答。経理担当者は、より専門的な問い合わせや複雑な業務に集中できます。
これらの例はほんの一部ですが、AIが経理業務の様々な場面で「面倒な作業」「時間のかかる作業」「ミスしやすい作業」を肩代わりしてくれるイメージが湧きましたでしょうか?さらに、既存の自動化(例えばスプレッドシートの関数やGASコード)も、AIの助けを借りて高度化したり、仕様書を自動生成して業務フローを透明化したり、といった活用も可能です。
2. 経理にAIを導入するメリットは?~「ラクになる」だけじゃない!~
AIを経理業務に導入するメリットは、単に「仕事がラクになる」「時間が短縮される」だけではありません。会社全体にとって、そして経理担当者自身のキャリアにとっても、多くのプラスの効果が期待できます。
- ミスの劇的な削減と精度の向上: AIは人間のように疲れたり、集中力が途切れたりしません。データ入力や計算、照合といった定型業務において、ヒューマンエラーを大幅に削減し、業務の精度を格段に向上させます。例えば、手作業で1%あったミスが、AI導入で0.01%になったとしたら、1万件の処理で100件発生していたミスがたった1件になる計算です。これにより、ミスの特定や修正にかかる時間も大幅に削減され、業務改善も進みます。
- コスト削減(中長期的視点): 初期投資や月額利用料がかかる場合もありますが、AIによる業務効率化で残業時間が削減されたり、将来的にはアウトソーシング費用や追加の人員採用を抑制できたりと、中長期的に見れば人件費を中心としたコスト削減に繋がる可能性があります。
- 付加価値の高い業務へのシフト: これが最も大きなメリットかもしれません。請求書処理や経費精算といったルーチンワークをAIに任せることで、経理担当者は、財務分析、予算策定、経営戦略への提言、業務プロセスの改善提案といった、より専門性が高く、会社の意思決定に貢献できる付加価値の高い業務に時間とエネルギーを注げるようになります。
- 従業員満足度の向上: 単調で時間のかかる作業から解放されることは、経理担当者の仕事へのモチベーションや満足度を高めます。「自分はもっと重要な仕事ができるはずなのに…」というフラストレーションを軽減し、やりがいを感じられる環境づくりに繋がります。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進と企業競争力の強化: バックオフィス業務のAI化は、会社全体のDXを加速させる重要な一歩です。業務プロセスが効率化され、データ活用が進むことで、企業全体の競争力強化にも貢献します。
3. 【重要】AI活用、でもその前に!経理の機密情報と会社ポリシーの壁
AIのメリットは大きいですが、特に経理業務でAIを活用する際には、絶対に忘れてはならない重要な注意点があります。それは**「情報セキュリティ」と「会社ポリシーの遵守」**です。
経理部門が扱う情報は、会社の財務状況、取引先の詳細、従業員の給与情報など、極めて機密性が高いものばかりです。これらの情報が外部に漏洩した場合、会社は計り知れない損害を被る可能性があります。
AIツール、特にインターネット経由で利用するクラウド型のサービスや、外部のAIモデルを利用する場合、
- 本当にそのツールは安全なのか?(データの暗号化は?アクセス管理は?運営会社の信頼性は?)
- 入力したデータはどのように扱われるのか?(AIの学習に使われてしまうことはないか?第三者に提供されることはないか?)
といった点を慎重に確認する必要があります。
そこで最も大切なのは、「まずは上司、社長等に必ず相談すること」です。 AIツールを導入したい、あるいは試してみたいと考えた場合、自己判断で進めるのではなく、必ず上司や、必要であれば経営層に相談し、許可を得るようにしましょう。その際、AI導入による具体的な業務メリット(効率化、コスト削減など)をしっかりと伝えれば、多くの場合、前向きに検討してもらえるはずです。
ただし、業種や会社の特性によっては、AIツールの導入が難しいケースもあります。例えば、金融機関や監査法人、あるいはそのクライアント企業など、特に高度な情報セキュリティが求められる会社では、クラウド型AIツールの利用には非常に慎重な判断が必要となり、導入のハードルが高いのが実情です。
一方で、スタートアップや、すでにGoogle Workspaceなどのクラウドサービスを積極的に導入している会社であれば、例えばGoogleのAIである「Gemini」はスプレッドシートとの連携がスムーズだったり、Meetでの会議メモ機能があったりと、既存の業務フローに組み込みやすく、追加コストや導入の負担も比較的少なく始められる可能性があります。
いずれにしても、
- 会社のセキュリティポリシーや情報管理規程を必ず確認し、遵守する。
- 新しいツールを導入する際は、社内の承認プロセス(IT部門への確認など)を必ず経る。
- 「便利そうだから」と安易に個人判断で、機密情報を含むデータをAIツールに入力・アップロードするようなことは絶対に避ける。
これらの点を徹底することが、安全なAI活用の大前提となります。
4. 我が社でもAI活用!最初の一歩はどう踏み出す?~スモールスタートのすすめ~
「AI、うちでも使ってみたいけど、何から始めたらいいんだろう…」そう感じる方も多いでしょう。大丈夫です、いきなり全社的に大きなシステムを導入する必要はありません。まずは**「スモールスタート」**で、小さな成功体験を積み重ねていくのがおすすめです。
- ステップ1:課題の洗い出しと「AIでできそうなこと」の特定 まずは、現在の経理業務の中で「時間がかかっている」「ミスが多い」「単純作業だ」と感じる部分を洗い出してみましょう。その中で、「これはAIで自動化できそうだな」「AIで効率化できそうだな」という業務をいくつかピックアップします。
- ステップ2:ツールの情報収集と比較検討 最近のAIツールは非常に能力が高く、日々アップデートされています。基本的にはどの主要なツールを使っても一定の成果は期待できるでしょう。 大切なのは、自社の課題や規模、予算に合ったツールを選ぶことです。無料トライアルがあるツールも多いので、いくつか試してみて、操作性や機能を比較検討しましょう。 特に中小企業やスタートアップで、すでにGoogle Workspaceを導入している場合は、GoogleのAIである「Gemini」が有力な選択肢になるかもしれません。スプレッドシートとの連携がスムーズで、日々の業務に組み込みやすく、追加コストや導入の負担も比較的少ない可能性があります。
- ステップ3:部分的な導入と効果測定 最初から全ての業務にAIを導入するのではなく、特定の業務(例えば、請求書のデータ入力の一部だけ)に限定して導入し、その効果(時間短縮、ミス削減など)を測定してみましょう。
- ステップ4:社内への共有と理解促進 小さな成功事例ができたら、それを社内で共有し、AI活用のメリットや可能性について、経営層や他部署の理解を深めていくことも大切です。
焦らず、一歩ずつ進めていくことが、AI活用の成功の秘訣です。
5. AI導入で経理の仕事はどう変わる?~より専門的で価値ある業務へ~
「AIが導入されたら、経理の仕事はなくなっちゃうの?」そんな不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、私はそうは思いません。むしろ、AIは経理担当者を面倒な単純作業から解放し、より専門的で、より付加価値の高い業務へとシフトさせてくれる強力なパートナーだと考えています。
AIに任せられる業務(定型的なデータ入力、大量の伝票処理、単純な照合業務など)が増えることで、私たち経理担当者は、
- 財務データの分析と、それに基づく経営への提言
- 業務プロセスの見直しと、さらなる改善提案
- 内部統制の強化と、リスク管理体制の構築
- 経営戦略の策定への参画
といった、より高度な判断やコミュニケーション、創造性が求められる業務に、これまで以上に時間とエネルギーを注げるようになります。
もちろん、そのためには、AIを使いこなし、AIが出してきた結果を正しく解釈・活用するための**新しいスキル(例えば、データリテラシーやITリテラシー、そしてAIとの対話力!)**を身につけていく必要はあるでしょう。
しかし、会計基準や税法を理解し、倫理観を持って会社の数字を守り、経営者や他部署と円滑なコミュニケーションを取るといった、経理担当者ならではの専門性や人間的なスキルは、AI時代においても決して変わることのない重要な価値であり続けるはずです。
まとめ:AIは経理の「敵」じゃない、賢く使って「味方」にしよう!ただしルールは守ってね。
AIの進化は目覚ましく、経理業務のあり方も大きく変わろうとしています。しかし、それは決して恐れるべきことではありません。
AIは、私たち経理担当者を単純作業や長時間労働から解放し、より専門的で創造的な、そして「ラクして休める」働き方を実現するための、非常に強力なツールであり、頼れるパートナーになり得るのです。
ただし、その恩恵を最大限に受けるためには、
- AIの可能性と限界を正しく理解すること。
- 機密情報の取り扱いや会社のポリシーといった「ルール」をしっかり守ること。
- AIに任せるべき仕事と、人間がやるべき仕事を見極めること。
- そして何より、AIを「使いこなす」ための新しいスキルを学び続ける意欲を持つこと。
これらの姿勢が大切です。
まずは小さなことから試してみて、AIとの協働を始めてみませんか? 例えば、日々のスプレッドシート作業でGeminiにちょっとした計算やデータ整理を手伝ってもらう、といったことからでも構いません。きっと、あなたの仕事が少し「ラク」になるのを実感できるはずです。
AIを恐れるのではなく、賢く「味方」につけて、あなたの経理としての価値をさらに高め、会社全体のDXを推進していきましょう!


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