「売上は順調だが、組織の歪みを感じる。バックオフィスを強化したいが、どんな人材を採用すべきか分からない…」 「現場もマネジメントもできる“スーパーマン”を探しているが、なかなか見つからない…」
年商数億円〜10億円規模に成長した企業の経営者から、このような相談をよく受けます。 しかし、経営理論と現場の実情を紐解くと、多くの社長が陥っている**「ある採用の勘違い」**が浮き彫りになります。
この記事では、大手監査法人出身の会計・経営コンサルタントの視点から、成長企業が陥る「年商10億円の壁」の正体と、それを突破するために本当に必要な「No.2(CFO候補)」の条件について解説します。
Part 1:「フェーズ」を見誤るな。創業期と成長期の決定的な違い
まず、会社の「フェーズ」によって、正解となる行動は180度変わることを認識する必要があります。
- 創業期(0→1): 社長のマンパワーと売上が全て。バックオフィスは最低限で良い。
- 成長期(1→10): 取引数や従業員が増え、社長の目が届かなくなる。「管理」と「仕組み」こそが、成長を加速させる「攻め」になる。
このフェーズの変化に気づかず、創業期の成功体験のまま「営業に合わせて人を増やすだけ」の拡大を続けると、属人化とミスが激増し、組織は内部から崩壊します。
年商10億円の壁を越えるには、「社長のマンパワー」から「組織の仕組み」へと、経営のOSを入れ替える必要があるのです。
Part 2:採用すべきは「作業員」ではなく「全体最適の設計者」
では、このフェーズで採用すべき「キーマン」とは誰か? 多くの社長は「自分と同じようにガンガン働ける人」や「現場の穴を埋めてくれる人」を求めがちですが、それは間違いです。
必要なのは、社長ができない(あるいはやるべきではない)範囲、つまり**「全体最適(Total Optimization)」の視点を持ち、現場が潰れないための『仕組み』を設計できる建築家のような人材**です。
【求めるべきスキルセット】
- 営業はできなくていい(それは社長や営業部長の役割です)。
- その代わり、現場一人ひとりの不満や課題(「無駄な入力作業が多い」「承認フローが遅い」など)を吸い上げ、それを特定の個人の頑張りではなく、「システムやルールの変更」で解決できる能力が必要です。
社長の「経営」という言葉を、現場が動ける「業務フロー」へと翻訳できる人間。それこそが、このステージで必要なCFO(最高財務責任者)や管理部長の姿です。
Part 3:面接で見抜く!「優秀だけど採用してはいけない」人材の特徴
ここで、最も注意すべき落とし穴があります。 面接で一見頼もしく見えるけれど、実は組織の成長を止めてしまうタイプの人材です。
それは、「現場ができないから、自分が巻き取ってやります」というプレイングマネージャータイプです。
「私が残業してなんとかします」「根性でカバーします」 創業期には頼もしい言葉ですが、組織化のフェーズにおいては危険信号です。なぜなら、高い報酬をもらっている幹部クラスの人材が現場作業に忙殺されることは、**本来やるべき「価値ある仕事(=誰でも回る仕組みを作ること)」からの逃げ(責任放棄)**に他ならないからです。
「自分がやる」のではなく、「誰もができるようにする」。 この視点を持てない人を幹部に据えてしまうと、組織は永遠にその人に依存し続け、スケーラビリティ(拡張性)を失います。
まとめ
会社を次のステージに進めるのは、スーパープレイヤーではありません。 現場と経営の間に立ち、感情ではなく「数字」と「仕組み」で組織を動かせる人間です。
「現場の仕事を巻き取る優しさ」ではなく、**「現場が疲弊しない仕組みを作る責任感」**を持った右腕を見つける(あるいは外部から借りる)こと。それが、社長であるあなたにしかできない、組織づくりの最初の一歩です。


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