経理部長さん: シクミさん、実は毎月の月次決算が締まるのが遅くて、本当に困っているんです。
経理部長さん: 経営層からは、もっと早く数字を出せとせっつかれますし、現場の経理スタッフも疲弊しきっています。精神論で「もっと頑張ろう」と声をかけても、もう限界でして…。
シクミ: なるほど、それは本当に辛い状況ですね。お察しいたします。実は、月次決算の遅延は多くの企業で共通の悩みなんです。そして、その根本原因は、精神論や個人の努力不足で片付けられるような単純なものではないことがほとんどです。
シクミ: 私が大手監査法人時代に見てきた企業でも、またMBAで学んだ組織論の視点から見ても、月次決算が遅れるのは、個人の力量ではなく、組織全体の「仕組み」や「数字」の管理方法に、構造的な問題が潜んでいるケースが圧倒的に多いんですよ。
シクミ: 本日は、その構造的な問題点を一緒に紐解き、具体的な改善策を提示させていただきますね。
根本原因の特定 – 精神論では解決できない「構造的問題」
多くの経営者や管理職の方は、月次決算の遅延を「経理担当者の処理能力が低い」あるいは「もっと集中して取り組めば解決する」といった精神論で捉えがちですよね。
しかし、実際には個人の努力だけではどうにもならない、組織全体に根差した構造的な問題が潜んでいることがほとんどです。
例えば、他部署からの証憑やデータの連携が遅れたり、そもそも業務プロセスが属人化していて標準化されていなかったりするケースがよく見られます。
監査法人として数々の企業の決算プロセスを見てきた経験から言えば、こうしたボトルネックは、単一の部署の問題ではなく、企業全体の情報連携の不備や、明確な責任分界点の欠如から生じることが多いのです。
また、経理部門が処理に追われるあまり、決算業務の全体像を俯瞰し、どこに時間がかかっているのかを客観的な数字で把握できていない、という状況も少なくありません。
こうした状況では、いくら精神論で「頑張れ」と鼓舞しても、根本的な解決には至らないどころか、スタッフの疲弊を招くだけになってしまいます。
「仕組み」で解決する月次決算のスピードアップ術
では、この構造的な問題をどう解決していくか、その鍵はまさに「仕組み」にあります。
まずは、月次決算の全プロセスを可視化し、標準化することから始めましょう。誰が、いつ、何を、どのように行うのか、明確なワークフローマップを作成するのです。
次に、ITシステムの活用は不可欠です。ERPシステムや会計ソフトの機能を最大限に活用し、自動仕訳やデータ連携を強化することで、手作業による入力ミスや時間のロスを大幅に削減できます。
また、重要なのは「先行処理」の概念です。例えば、毎月発生する固定費や収益については、事前に計画的に計上を進めることで、月中の仕訳入力を平準化し、月末の集中を避けることができます。
他部署との連携も「仕組み」として組み込みましょう。売上や仕入、経費に関する情報が、経理部門が求めるタイミングとフォーマットで提供されるよう、定期的な情報共有会を設けるのも有効です。
さらに、月次決算の目標日数を設定し、その達成度を測るKPIを導入することで、継続的な改善のサイクルを回すことができます。これはMBAで学ぶ品質管理の考え方にも通じるものです。
「数字」で見る改善効果 – 経営判断の質を高めるためのフィードバックループ
「仕組み」を導入したら、その効果を「数字」で測り、さらに改善へとつなげることが重要です。
月次決算の早期化においては、「決算完了までの日数」をKPIとして設定し、具体的な目標値を設けましょう。例えば、「従来の10営業日から5営業日へ」といった具体的な数字です。
そして、早期に締まった決算書からは、単なる過去の数字ではなく、未来の経営判断に資する価値あるインサイトを引き出すことができます。例えば、予実分析を頻繁に行い、計画との乖離を早期に発見することで、迅速な是正措置を講じられるようになります。
部門別の採算管理を強化したり、キャッシュフローの予測精度を高めたりすることも、早期の月次決算情報があればこそ可能になるのです。これは、経営戦略を立てる上で非常に重要な要素となります。
監査法人として、私は常に「数字の信頼性」を重視してきました。正確でタイムリーな数字が提供されることで、経営者は自信を持って意思決定を下すことができ、ひいては企業の成長に直結します。
「仕組み」によってプロセスを効率化し、「数字」によってその効果を測定し、さらに改善を重ねるというPDCAサイクルを回すことで、月次決算は単なる事務作業ではなく、強力な経営ツールへと進化するのです。
まとめ
月次決算の遅延は、多くの場合、個人の頑張りでは解決できない構造的な問題に起因します。
しかし、今回ご紹介したように、具体的な「仕組み」を導入し、その効果を「数字」で客観的に評価することで、この長年の悩みを解決することは十分に可能です。
経理部門の疲弊を防ぎ、迅速かつ質の高い経営判断を可能にする。これこそが、私たちが目指すべき企業の姿です。
経営者の皆様には、ぜひこの機会に月次決算のプロセスを根本から見直し、「仕組み」と「数字」の力で、より強固で俊敏な経営体制を築いていただきたいと心から願います。

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