ある中小企業の経営者さん: 「シクミさん、うちの経理はいつも経費精算で手一杯なんです。月末月初は残業続きで、担当者も疲弊しています。なんとかしたいのですが、どこから手をつけていいやら…」
シクミ: 「なるほど、それはお辛い状況ですね。多くの経営者の方が同じ悩みを抱えていらっしゃいます。しかし、アナログな経費精算がもたらす問題は、単なる経理の業務負荷だけではないんです。実は、あなたの会社を静かに蝕む『3つの病巣』が隠れている可能性が高いんですよ。」
病巣その1: 見えない人件費と生産性ロス、会社を蝕む「隠れたコスト」
経営者の方々は、経費精算が「手間」だと感じていらっしゃるかもしれませんね。しかし、実はその「手間」が、会社の利益を静かに削り取っているのをご存じでしょうか。経費の申請、承認、処理、そして各部署での確認作業。これら全てに、従業員の貴重な時間が費やされています。
例えば、従業員が100人いる会社で、一人あたり月2時間を経費精算に使っているとしましょう。これは年間で2400時間、人件費に換算すればどれほどのコストになるか、想像してみてください。
監査法人時代、私は多くの企業の無駄なコストを見てきました。この隠れた人件費は、本来ならばもっと生産性の高い業務に充てられるべき資源なんです。
MBA的な視点で見れば、これはまさに「機会損失」そのもの。見えないコストの積み重ねが、会社の競争力を少しずつ奪っていくのです。
病巣その2: 深刻化する不正リスクとコンプライアンス違反の温床
手作業による経費精算は、残念ながら不正の温床となりやすい側面があります。領収書の紛失、改ざん、架空の申請、私的な支出の混入など、ヒューマンエラーだけでなく、意図的な不正を見抜くことは至難の業ですよね。
特に、確認作業が形骸化している組織では、不正が長期間発覚しないことも珍しくありません。私たちが監査に入った際、そうした見落とされがちなリスクを発見することも多々ありました。
企業の信頼性は、一度失墜すると回復が非常に困難です。現代の企業経営において、コンプライアンス体制の構築は不可欠な要素です。
デジタル化されていないシステムでは、監査証跡の確保も難しく、企業としてのガバナンスが脆弱になってしまうのです。これは、単なる経理の問題ではなく、企業経営の根幹に関わる重大なリスクだと認識すべきでしょう。
病巣その3: 経営判断を鈍らせる「遅滞情報」と機会損失
経費精算がアナログだと、会社の支出状況をリアルタイムで把握することができません。月次決算に時間がかかり、正確な数字が経営者の手元に届くのは、いつも時間が経過してから、といった状況ではないでしょうか。
現代のビジネス環境は、目まぐるしく変化しています。資金繰りや予算実績の管理、将来の投資判断など、迅速かつ正確な情報に基づいた意思決定が不可欠です。
しかし、アナログなプロセスでは、情報が常に「過去のもの」になってしまい、経営者の判断を鈍らせてしまいます。MBAで学ぶ戦略論では、データに基づいた意思決定の重要性が繰り返し強調されます。
情報が遅れることで、市場の変化への対応が遅れ、新たなビジネスチャンスを逃してしまうことも考えられます。これは、会社の成長機会を自ら手放しているに等しい行為と言えるでしょう。
まとめ
アナログな経費精算は、一見すると「些細な業務」に見えるかもしれません。しかし、これまでお話してきたように、見えない人件費として利益を蝕み、不正やコンプライアンスリスクを高め、そして経営判断を鈍らせる「3つの病巣」として、会社の健康を静かに蝕み続けているのです。この問題は、経理部門だけの問題ではなく、経営全体に関わる非常に重要な課題と言えます。今こそ、デジタル化への一歩を踏み出し、会社の体質を根本から改善する時期ではないでしょうか。健全な経営基盤を築き、持続的な成長を実現するためにも、この「病巣」に真剣に向き合うことが、これからの経営者には求められています。


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