中小企業の経営者さん: 「シクミさん、うちの社員は毎月の経費精算に本当に手間取っていて、残業の原因になっているとまで言われるんです。システムを入れるのも敷居が高いし、何か良い方法はないかと悩んでいまして…」
シクミ: 「なるほど、それは本当に頭の痛い問題ですよね。多くの経営者の方が同じ悩みを抱えています。実はその経費精算の非効率は、目に見えにくい形で会社の利益を蝕んでいる可能性があるんです。
今日はその“見えない損失”を具体的に可視化し、根本的な解決策を一緒に考えていきましょう。監査法人時代、私も多くの企業でこの問題に直面しました。」
あなたの会社は毎月いくら損していますか?経費精算の「見えないコスト」を監査法人の視点から可視化
経費精算と聞くと、多くの経営者の方は「必要な事務作業だ」と割り切っていませんか?
しかし、この日常業務の中に、実は企業の利益を静かに圧迫する「見えないコスト」が隠れていることが多いのです。これは私が監査法人で数々の企業の財務諸表を見てきた中で、常に感じていた盲点の一つでもあります。
具体的に考えてみましょう。社員一人あたりが経費精算に費やす時間、上司が承認にかける時間、そして経理担当者が処理する時間。
これらを合計し、それぞれの時給に換算してみてください。たった数時間でも、会社全体で見れば毎月数十万円、年間数百万円という人件費が無駄になっているケースは珍しくありません。
さらに、見逃せないのが「機会損失」です。本来、営業担当者は顧客との関係構築に、エンジニアは新たな技術開発に、それぞれ時間を費やすべきですよね。
それなのに、煩雑な経費精算のために本来の業務から手が離れてしまうことは、企業の成長機会を失っていることに他なりません。これはMBAで学ぶ「トレードオフ」の概念そのものです。
そして、手作業による入力ミスや添付漏れに伴う修正作業、それらをチェックする時間も大きなコストです。監査の視点から見れば、小さなミスが積み重なり、内部統制上のリスクになる可能性さえあるのです。
見えないコストは生産性低下と離職リスクに直結する
経費精算の非効率がもたらすのは、時間とコストの損失だけではありません。これは、企業の最も重要な資産である「人」のモチベーションと生産性にまで悪影響を及ぼします。
多くの従業員は、経費精算の作業を「面倒なもの」「やりたくないもの」と感じていますよね?
このような事務作業に時間を奪われることは、彼らのエンゲージメントを低下させ、ひいては会社全体の生産性低下に繋がります。優秀な人材ほど、本来の業務に集中できないことへの不満は大きいものです。
そして、この不満が積み重なると、離職リスクさえ高めてしまう可能性があります。特に昨今、働きがいを重視する若い世代にとって、非効率な業務プロセスは会社の魅力を大きく損なう要因になり得るのです。
監査法人時代、私は数字だけでなく、現場の従業員の声にも耳を傾ける重要性を学びました。数字の裏には、常に人の感情や企業文化が息づいています。
目先の利益追求だけでなく、従業員満足度という長期的な視点を持つことが、持続可能な企業成長には不可欠だと考えます。
プロが示す抜本的な改善策:システム導入だけではないアプローチ
では、この見えない損失をどのように解消すれば良いのでしょうか?
多くの方が「経費精算システムを導入すれば解決する」と考えがちですが、実はそれだけでは不十分なケースが少なくありません。私の経験上、最も重要なのは「プロセス」の見直しなのです。
まずは、現在の経費精算ルールやフローが本当に最適かを確認してください。例えば、領収書の提出期限、承認ルート、精算対象となる費目の細かさなど、過剰なルールが社員の負担を増やしていませんか?
シンプル化と標準化は、業務効率化の基本中の基本です。私が携わったM&A後の統合プロジェクトでも、プロセスの再構築が成功の鍵でした。
その上で、テクノロジーの活用を検討するべきです。クラウドベースの経費精算システムは、入力から承認、仕訳、そして会計システム連携までを自動化し、劇的な効率化を実現します。
AIによるレシート読み取り機能などは、社員の入力負担を大きく軽減し、ミスも減らしてくれるでしょう。これは、もはや選択肢ではなく、現代のビジネス環境においては必須のインフラと言えます。
重要なのは、システム導入と同時に、社員への丁寧な説明とトレーニングを行う「チェンジマネジメント」です。新しいプロセスへの移行を円滑に進めることで、最大の効果を引き出すことができます。
まとめ
今日の対話を通じて、経費精算が単なる事務作業ではなく、企業経営における重要な戦略的課題であることがご理解いただけたかと思います。
目に見えない損失は、放置すればするほど会社の成長を阻害し、優秀な人材の流出にも繋がりかねません。
ぜひこの機会に、貴社の経費精算プロセスを数字と人の両面から見直し、より生産的で従業員満足度の高い組織へと進化させてください。
一見地味に見える業務改善が、未来の企業価値を大きく左右するのです。私も長年、企業の「仕組み」づくりをサポートしてきましたが、小さな改善の積み重ねが大きな成果に繋がることを何度も目にしてきました。


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