顧問先の経営者や、このブログにお問い合わせをくださる方から、今もいちばん多く聞かれるのが「インボイス制度、結局うちは何をすればいいんですか」という質問です。制度が始まってしばらく経ちますが、現場の混乱は正直まだ収まっていません。
この記事では、会計士としていろいろな会社のインボイス対応を見てきた中で、「ここでつまずく人が多いな」と感じたポイントを中心に、Q&A形式でまとめました。制度の条文を網羅的に説明するというより、実務で迷いやすいところに絞っています。
Q1. うちは免税事業者のままでいいの?それとも登録すべき?
これがいちばん多い相談です。答えは「取引先次第」としか言いようがないのですが、判断の軸はシンプルです。
- 主な取引先が課税事業者(法人・仕入税額控除をする事業者)中心 → 登録を検討する価値が高い
- 主な取引先が一般消費者、または免税事業者同士の取引が中心 → 急いで登録しなくてもよいケースが多い
「取引先に迷惑をかけたくないから、とりあえず登録した」という判断も悪くはありませんが、免税事業者から課税事業者になると納税義務が生じます。売上規模によっては数十万円単位の負担増になるので、「登録=正解」と決めつけず、取引先との力関係や価格交渉の余地も含めて考えることをおすすめしています。
Q2. 経理の現場では、具体的に何が一番面倒になった?
私が相談を受けてきた範囲でいうと、圧倒的に「請求書・領収書のチェック作業」が増えたという声が多いです。具体的には次のような手間です。
| 作業 | インボイス制度前 | インボイス制度後 |
|---|---|---|
| 受け取った請求書の確認 | 金額・日付・宛先を確認する程度 | 登録番号の有無・記載事項の不備までチェック |
| 免税事業者からの仕入 | 特に区別なし | 経過措置の適用区分(80%控除・50%控除など)を都度判定 |
| 会計ソフトへの入力 | 科目と金額を入力するだけ | 税区分をインボイス対応の区分で選び直す必要あり |
特に経過措置(免税事業者からの仕入について、当面の間は一定割合を控除できる制度)の扱いは、会計ソフトの設定を誤ると気づかないまま何ヶ月も間違え続けてしまうことがあります。導入直後は、月次の試算表を出すタイミングで一度、税区分の設定を第三者に確認してもらうことを強くおすすめします。
Q3. 登録番号のチェックって、どこまでやればいいの?
「取引先が本当に登録事業者かどうか、毎回国税庁のサイトで確認しないといけないの?」という質問もよくいただきます。実務上は、すべての請求書について毎回検索する必要はありません。継続的に取引がある先であれば、契約や取引開始のタイミングで一度確認し、登録番号を先方情報として台帳に控えておけば十分です。スポットの取引や高額な取引についてだけ、都度チェックする運用にしている顧問先が多い印象です。
Q4. 会計ソフトを変えれば、この手間はなくなる?
正直なところ、「ソフトを変えれば全部自動化される」というのは期待しすぎです。freee会計やマネーフォワードクラウドなど主要な会計ソフトは、インボイス対応の税区分選択や経過措置の自動判定にかなり対応してきていますが、それでも「そもそもの請求書に登録番号が記載されているか」「経過措置の対象取引かどうか」の一次判断は人の目が必要です。ソフトはあくまで、判断したあとの計算や仕訳作成を楽にしてくれる道具だと考えておくのが実態に近いです。
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まとめ:完璧を目指さず、「間違えやすい3点」だけ押さえる
インボイス制度は範囲が広く、完璧に理解しようとすると時間ばかりかかってしまいます。実務上は、次の3点だけ押さえておけば大きな事故は防げます。
- 主要な取引先ごとに、登録番号を台帳で管理できているか
- 免税事業者からの仕入について、経過措置の区分を会計ソフトで正しく設定できているか
- 月次で一度、税区分の入力ミスがないか誰かがチェックする仕組みがあるか
この3つが仕組みとして回っていれば、あとは実務をこなしながら細部を覚えていけば十分だというのが、これまで色々な会社を見てきた実感です。個別の判断に迷う場合は、顧問税理士や会計士に一度相談することをおすすめします。


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