経理部長さん: 「シクミさん、実は最近、会社の経理体制について、非常に頭を悩ませているんです。ベテランのAさんに多くの業務が集中していて、Aさんがいないと決算もままならない状況でして。もしAさんが急にいなくなってしまったらと考えると、夜も眠れませんよ…」
シクミ: 「なるほど、それはお辛いですね。経理部長さんのそのご不安、よく理解できます。実は、私が大手監査法人時代に数多くの企業を拝見してきましたが、経理の『属人化』は、多くの経営者や管理職の方が抱える、まさに『見えない病』なんです。その病は、単なる業務停滞に留まらず、会社の数字に直接的な損失を生み出し、最悪の場合、事業継続そのものに重大なリスクをもたらすことさえあるのをご存知でしたか?」
経理の属人化が引き起こす「見えないコスト」とは?
多くの企業では、経理業務が特定の人間に集中することで、目に見えないコストが日々発生しているんです。例えば、決算業務が遅れると、経営判断のスピードが落ち、市場機会を逃すことにつながりますよね。これは、売上機会の損失という形で、年間数百万、場合によっては数千万といった数字に直結する可能性があります。
また、特定の担当者しか知らない業務は、ミスが発生しても発見が遅れがちです。その修正にかかる時間や労力、さらには税務上のペナルティや取引先からの信用失墜など、金銭的な損失に換算できるものも少なくありません。
さらに、キーパーソンの退職リスクに備えるためのバックアップ体制がない状態では、新たに人材を育成するためのコストや、引き継ぎがスムーズにいかないことによる生産性低下も、決して無視できない隠れたコストなんですよ。
監査法人が見た!属人化が生む「事業継続リスク」という最悪のシナリオ
私が監査現場で数々の企業を見てきた中で、経理の属人化がもたらす最も恐ろしい側面は、まさしく事業継続リスクそのものです。特定の担当者にしか処理できない業務が多いと、その担当者が病気や事故で突然出社できなくなった場合、会社の財務活動が完全に停止してしまう事態も起こりえます。
これは、資金繰りの悪化や、銀行との取引停止、最悪の場合は上場廃止や倒産へとつながりかねない、非常に深刻な経営リスクです。特に、中小企業においては、経理のキーパーソンが数名に限定されることが多く、その影響はより深刻化しやすいと言えるでしょう。
また、属人化された経理は、不正の温床となるリスクも抱えています。チェック機能が十分に働かない環境は、経理担当者による横領や粉飾決算といった不正行為を見過ごす可能性を高め、企業の社会的信用を根底から揺るがすことにもなりかねません。
属人化から脱却!仕組み化で経理を「経営の武器」に変える具体策
では、この属人化という『見えない病』から脱却し、経理を経営の強力な武器へと変えるためには、具体的にどのような手を打てば良いのでしょうか。まず最も重要なのは、業務プロセスの『可視化』と『標準化』です。
全ての経理業務について、誰が、いつ、何を、どのように行っているのかを文書化し、フローチャートを作成することで、特定の個人に依存しない仕組みを構築します。これにより、複数の社員が各業務を理解し、相互にカバーできる体制を整えることが可能になります。
次に、『ITシステムの活用』も不可欠です。会計システムやERPを導入し、手作業や属人的な判断に頼っていた部分を自動化・システム化することで、業務の効率性を高め、ヒューマンエラーを削減できます。これは、まさにMBAで学ぶオペレーション最適化の視点ですよね。
そして、『権限と責任の明確化』と『内部牽制体制の強化』も忘れてはなりません。業務分担を明確にし、相互チェックの仕組みを導入することで、不正リスクを低減し、経理部門全体の透明性と信頼性を向上させることができます。これにより、経理は単なる記録係ではなく、経営戦略を支える重要な情報部門へと変貌を遂げるでしょう。
まとめ
ここまで、経理の属人化がもたらす『見えないコスト』と『事業継続リスク』、そしてそれらを克服するための具体的な『仕組み化』の重要性についてお話ししてきました。経理の属人化は、一見すると大きな問題に見えなくても、実は会社のキャッシュフロー、信用、そして未来を蝕む深刻な課題です。
しかし、ご安心ください。適切な手順を踏んで業務を可視化し、標準化し、システム化することで、この課題は必ず乗り越えられます。属人化された経理は、いわば時限爆弾のようなものですが、仕組み化された経理は、あなたの会社の成長を加速させる、まさに羅針盤となるでしょう。
今日の対話が、あなたの会社の経理体制を見直し、より強固なものへと変革する一助となれば幸いです。未来の安定的な経営のために、今こそ、経理の仕組み化に着手する最適なタイミングだと私は確信しています。


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