OKR(Objectives and Key Results)の導入相談を受けることが増えました。ただ、実際に運用を見ていると、半年ほどで「毎期の目標設定が儀式になっている」状態に陥っている会社が少なくありません。この記事では、OKRそのものの解説というより、会計・数値管理を専門にしてきた立場から見た「形骸化を防ぐための考え方」を中心に書きます。
OKRが形骸化する典型パターン
これまで見てきた中で、OKRがうまく回らなくなる会社にはいくつか共通点があります。
- Key Results(成果指標)が、達成しやすい数字に寄っていく
- 四半期ごとの振り返りが「達成率の報告会」になり、次のアクションにつながらない
- 経営陣のOKRと現場のOKRがつながっておらず、現場は「やらされ感」だけが残る
特に多いのが1つ目です。人は評価されると分かっている数字に対して、無意識に達成しやすいゴールを設定してしまいます。これはOKRに限らず、予算管理や業績評価全般に共通する人間の性質だと感じています。
会計の視点から見る「良いKey Results」の条件
会計士としての実務では、日々「その数字は何を意味しているのか」を突き詰めて考える仕事をしています。その感覚をOKRに当てはめると、良いKey Resultsの条件は次の3つに集約できると考えています。
1. 誰が見ても同じ数字になる(定義があいまいでない)
「顧客満足度を上げる」ではなく、「NPSを◯点にする」のように、算出方法が明確な指標にする。定義があいまいだと、期末になって「達成した/していない」の解釈が担当者によって分かれてしまいます。
2. 自分たちの行動で動かせる数字である
景気や競合の動向など、自社の努力だけではコントロールできない外部要因が大きい指標は、Key Resultsには向きません。行動と結果の因果関係が見えやすい指標を選ぶことが大切です。
3. 60〜70%達成できれば上出来、という水準に設定されている
OKRは本来、100%達成を前提にしない「ストレッチな目標」の枠組みです。この前提が社内で共有されていないと、達成率が低いことを恐れて安全な目標ばかり設定されるようになります。
四半期の振り返りを「報告会」で終わらせない工夫
振り返りの場を、達成率を確認するだけの場にしないためには、次の質問を必ずセットで聞くようにするとよいと感じています。
- この数字が動いた(動かなかった)主な要因は何か
- 次の四半期、同じKey Resultsを追うか、それとも指標自体を見直すか
- この目標のために、やめた業務・後回しにした業務は何か
特に3番目の質問は見落とされがちですが、新しい目標を追加するばかりで既存業務を減らさなければ、現場のキャパシティはいずれ限界を迎えます。「何を増やすか」だけでなく「何をやめるか」もセットで振り返る運用が、長続きするOKRの条件だと考えています。
まとめ
OKRは仕組み自体がよくできているフレームワークですが、運用する組織の「数字との向き合い方」次第で、形骸化もすれば強力な武器にもなります。導入を検討している方は、ツールや目標設定のテンプレートを探す前に、まず「自社は数字に対して正直でいられる組織かどうか」を振り返ってみることをおすすめします。


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