「日々の決算業務はこなせるけど、このままで5年後、10年後も通用するのだろうか…」 「ニュースでAIによる自動化の話題を見るたびに、自分の市場価値がなくなるのではと不安になる…」
経理としての経験を積む中で、このような漠然とした不安を感じていませんか?
この記事は、そんなあなたのためのものです。世の中に溢れる「資格取得」や「ITスキル学習」といった情報に飛びつく前に、まずやるべきことがあります。それは、あなたの仕事の価値を根底から変える「思考の軸」を手に入れること。
専門家との対話を通じて、AIに代替されない「提案できる経理」になるための、具体的で、かつ現実的な最初のステップを解き明かしていきます。
Part 1:価値のシフト:「作業する経理」から「価値を創る経理」へ
まず、専門家は「経理の仕事が全てなくなることはない」と断言します。AIを動かすには、その企業特有の状況を正確にインプットする必要があり、特に業務が整理しきれていない中小企業では、AIが人間に完全に取って代わることは困難だからです。
しかし、これまで「仕事」だと思っていたものの価値が、確実に低下していくこともまた事実です。
ここで重要になるのが、「単純な作業に時間を費やす」のをやめ、「企業の価値を高めるための業務」に時間をシフトしていくという考え方です。
幸いなことに、経理は「会社のお金の流れ」という、経営の根幹に関わるデータを最もよく知る立場にあります。その立場を活かし、ただ数字を作るだけでなく、その数字を元に経営管理に貢献すること。それこそが、AI時代に経理担当者の価値が飛躍的に高まるポイントなのです。
Part 2:最初のステップは「月次比較」から異常値を見つけること
では、「経営管理に貢献する」ための第一歩は何か?それは、月次決算の数字を比較し、そこに潜む「異常値」に気づくことから始まります。
専門家が最初に見るべきだと指摘するのは**「粗利率」**です。
「なぜ、毎月同じ事業を行っているのに、粗利率が大きくブレるのだろう?」
この素朴な疑問が、分析の出発点となります。その原因は、会計原則(費用収益対応の原則)が守られていないことかもしれませんし、異なる事業の数字が混ざってしまっていることかもしれません。
ただ漫然と数字を眺めるのではなく、「なぜ?」という疑問の目でデータを見つめること。それが、「提案できる経理」への入り口です。
Part 3:「部門別会計」で、事業部長を味方につける
粗利率のブレといった「なぜ?」の原因を探る上で、不可欠となるのが**「部門別会計」**の視点です。
会社全体の合計数値を眺めていても、真の原因は見えてきません。どの事業が、どれだけのコストをかけて、どれだけの利益を生んでいるのか。その解像度で数字を見られて、初めて意味のある分析が可能になります。
そして、ここで最も重要なアクションは、経理部門の中だけで完結しないことです。
各事業の責任者である事業部長と対話し、**「この数字、もっと〇〇部長の事業の役に立つ形にできませんかね?」**と働きかけるのです。
「ただ集計された数字」ではなく、事業責任者が「自分の責任範囲の改善に使える、価値ある数字」を一緒に作っていく。この対話と共同作業こそが、経理を「コストセンター」から「プロフィットセンター」へと進化させ、あなたの社内での価値を決定的なものにします。
売上だけを追い求め、コストを無視する無責任な営業活動に歯止めをかけるのも、この正確な部門別採算に基づいた経理からの提案なのです。
まとめ
「提案できる経理」への道は、遠く険しいものではありません。
まず、足元にある月次データにプロとして「なぜ?」と疑問を持つこと。 そして、その疑問を解決するために、経理だけで抱え込まず、現場の責任者を巻き込んで「対話」を始めること。
その小さな一歩が、やがて会社全体を動かす大きな価値に繋がっていきます。「会社のお金の流れがわかる」というあなたのユニークな立場を武器に、ぜひ明日から、その一歩を踏み出してみてください。


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